研究課題
治療抵抗性精神障害の治療に期待されている経頭蓋直流刺激(tDCS)の臨床応用についての検討を行った。まず、健常成人を対象とした研究結果を再解析したところ、左背外側前頭前野の反復刺激により認知機能課題の成績が向上し、これは信号検出理論を用いた解析の結果から、正答率と信号・雑音の判別能力の変化が関係していることが示唆された。ただし、陽極刺激と偽刺激との差は明らかにできなかった。次に、健康成人を対象とした陽極または陰極刺激のtDCSの急性効果を言語流暢性課題について検討したところ。いずれの刺激も偽刺激との間に差を認めなかった。うつ病や統合失調症の幻聴に対するtDCSの報告をまとめると、安全性は高く、ある程度の有効性は示されている。しかし、刺激条件や偽刺激の妥当性、脳内での広がりの個人差などについては、まだまだ不明な点が多く、今後臨床応用する際の課題と考えられる。脳刺激法として広く用いられている電気けいれん療法(ECT)については、わが国では標準化がほとんどなされていなかったため、国際的な基準に合わせた形での推奨事項をまとめた。また、わが国ではECT実施時の発作閾値の検討がこれまでなされていないため、当院での実施例を解析し、海外での報告と大きな差がないことを報告した。発作閾値に影響を与える因子として、性差、年齢、ベンゾジアゼピンの併用などが示され、ECT実施に対してこれらに注意を払う必要性を明らかにした。新たな脳刺激法である脳深部刺激法については、精神障害に関与する刺激部位の問題が未解決なため、基礎的な研究が必要な段階であるとともに、倫理的な問題についての検討が必要である。
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http://erdb.yamanashi.ac.jp/rdb/A_DispInfo.Scholar?ID=43B8560E4968342C