研究課題/領域番号 |
24591701
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
小俣 圭 浜松医科大学, メディカルフォトニクス研究センター, 助教 (20508783)
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研究分担者 |
吉原 雄二郎 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (00529464)
松本 かおり 浜松医科大学, 医学部, 助教 (20447808)
尾内 康臣 浜松医科大学, メディカルフォトニクス研究センター, 教授 (40436978)
中村 和彦 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80263911)
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キーワード | 自閉症 / 脳構造 / MRS / 脳機能 / 顔認知 / 紡錘状回 / デフォルトモードネットワーク |
研究概要 |
本研究の目的は自閉症の病理を脳を通じて検討するものである。自閉症とは社会的相互作用の障害、コミュニケーション障害、こだわり行動などによって、日常生活に支障をきたしている症例である。自閉症の症例から脳における機能障害である可能性が高いことから、本研究では自閉症の病理要因として神経細胞の化学組成の異常を仮定し検討を行っている。 脳内における化学組成が通常と異なる可能性があることから、magnetic resonance spectroscopy (MRS)という手法を用いて自閉症者の脳および健常者の脳を調べている。MRSでは神経細胞の密度や神経伝達物質の濃度、組織内のエネルギー代謝に関する化学物質の濃度を計測可能である。一方で、神経細胞における化学組成の異常があるとすれば脳機能的側面にも影響が現れると考えられる。機能的MRI(fMRI)という手法を用いて自閉症の脳機能について検討を行っている。一つには、デフォルトモードネットワーク(DMN)という脳内において安静時に活動が高い脳領域について検討を行っている。DMNとは現在、ヒト脳における基礎的な脳活動と考えられており、この基礎的な脳活動が神経細胞の化学組成の異常によって影響を受けていることが考えられるためである。また、他には、顔認知における紡錘状回の活動を計測している。顔は社会的に重要な役割を果たす。自閉症においては、顔から相手の心情読取が苦手であることが知られており、この顔認知を担う場所における脳構造・脳機能異常が考えられる。この顔認知おいてはfMRIだけでなくMRSも合わせて検討する事により、自閉症の脳機能と脳構造の両面からアプローチが可能である。 今年度は、この顔認知における紡錘状回の働きについて、国際学会である第15回Mind Brain Science Symposium、国内学会Neuro2013において発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの先行研究より脳機能不全が自閉症の主要症状である社会性・コミュニケーション障害の要因であることが示唆されている。これに対して、fMRIやMRSという手法を用いて自閉症者の脳機能について検討を行ってきた。本研究においては、DMNの機能的破綻が、自閉症者の振る舞いを影響を与えていると仮定し検討している。現段階では、とりわけ自閉症者における紡錘状回の働きについて焦点を当ててきた。本研究目的は、自閉症者の生体脳内での代謝物質の生成異常を捉えることである。そしてそれに付随する機能的破綻を認知実験を行うことで明らかにすることである。この目的のため、実験当初は実験遂行するための技術的基盤を固める段階からスタートし、現段階では実際に被験者を呼んで計測する段階に進んでいる。また実験の結果も出始めており、実際に自閉症者において機能的な脆弱性が紡錘状回にあることが明らかになってきた。当初の目的であるDMNの機能や神経細胞の化学組成についても合わせてデータ取得を継続している。これらより研究目的の達成という観点から言えば研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本課題では自閉症における生体脳における機能・構造破綻について、fMRIやMRSという手法を用いて検討を行ってきている。現段階では、DMNにおける検討と紡錘状回における検討の二つのプロジェクトとして検討している。今後の検討としては、引き続き被験者を集めデータの収集を行うとともに、集めたデータからどのような機能的・構造的破綻が引き起こされているかについて解析を進める事とする。とりわけ、当初の目的であったDMNについてのデータ解析は解析手法において新工夫が検討されている。機能的ネットワークを解析するという事が一般に行われている。これは複数領域間での相関関係を探すという計算手法である。この機能的ネットワーク解析手法はまだ改善の余地があり、様々なアプローチがあり得る。例えばグレンジャー因果性テストなどを用いることで新たな知見が得られる可能性がある。そこで、既存の解析手法に加えて、新規解析手法の考案・検討も合わせて行い、当初の自閉症における脳構造的・脳機能的破綻について理解を深める方向で本課題を推進していくこととする。
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