研究実績の概要 |
本研究は、疼痛性障害に対する新規Serotonin and Norepinephrine Reuptake Inhibitors(SNRI)であるデュロキセチンの疼痛改善効果を確認し、疼痛改善効果に影響を与え得る要因として、生物学的因子 である薬物血中濃度、血中サイトカイン、神経成長因子、心理社会的因子である患者の人格傾向等について包括的に検討した。 疼痛性障害に対するデュロキセチンの疼痛改善効果については、41例について検討しその有効性を発表した(Clinical Neuropharma cology 35(6)p273-7、2012)。また、血中サイトカイン、ケモカイン、神経成長因子等について、対照群と比較測定し, かつ治療報告のある抗うつ薬での治療前後においても測定した。その結果、対照群と治療前0週, 治療前0週と治療後12週それぞれにおいて測定した神経炎症関連物質のうち, 以下に示すように, IL-1β, IL-6, IL-10, MIP-1β, BDNF, NGFは健常群と患者群の治療前0週とで, Eotaxin, MCP-1は治療前0週と治療後12週とで値に有意差が認められた。さらに、心理社会的因子としてBMS患者の養育体験・人格傾向については、口腔内灼熱症候群と診断された患者56名と年齢と性別をマッチさせた健常者116名のコントロール群とを比較検討した。その結果、BMS患者に特有の人格傾向として、Novelty Seekingが低い、つまり慎重になりやすく新しいことに着手しにくいという傾向を見出した(J Psychosomatic Res 78(5): 495-498、2015)。しかしながら、デュロキセチンの薬物血中濃度は、疼痛軽減効果との間に有意な関連を認めなかった(Clin Neuropharmacol40(4)p163-168, 2017)。 血中サイトカイン、ケモカイン、神経成長因子等に関する論文は、未発表であるが、現在、投稿準備段階であり、研究全体としてはおおむね順調に経過した。
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