研究課題/領域番号 |
24591705
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
城山 隆 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (00252354)
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研究分担者 |
前田 正幸 三重大学, 医学部附属病院, 准教授 (70219278)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 双極性障害 / 非定型精神病 / 精神病性うつ病 / 拡散テンソル画像 / 脳白質 / 前頭葉 |
研究実績の概要 |
健常者においても白質の微細構造の加齢変化があることから、加齢の影響を除くために患者群を40代50代に限局するように努めたが十分なサンプル数には至らず、研究期間を一年延長した。患者群のサンプル数の十分でない状況での予備解析は後のデータ解釈にバイアスを与えると考えて行っていない。患者群と健常群の比較解析の際に脳白質の加齢変化と病的変化の区別を考察する上での要因を探るために、健常者を対象として、脳白質容積の解析を試みた。SPM8,VBM8を用いて白質容積の加齢変化を40代50代の健常者を対象として解析したところ、加齢変化を示す脳白質領域は検出されなかった。従来の研究では脳白質の加齢変化に関しては容積減少を示す前に拡散テンソル画像のFA, MD, RD, ADなどのパラメータが先行して加齢変化をより鋭敏に反映するという報告が多くあり、中年期において脳白質容積変化がみられた場合は加齢変化よりも病的変化を示唆するものと考えて良いのかもしれない。本研究の解析対象は拡散テンソル画像であり、容積変化は当初の解析対象には含めていないが、両者の解析を併用することで、脳白質の加齢変化と病的変化の区別に関する考察に役立つものと考えられた。また、健常者の拡散テンソル画像において加齢変化は広範な白質領域で性差がみられた。本研究対象の気分障害のなかでも有病率の性差の観点からは女性に多い単極性うつ病と性差が少ないとされる双極性障害(II型では女性に多いという報告もある)とは異なることから、患者群と健常群の比較において加齢変化を考慮する場合に性差にも注意すべきであると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前頭葉ネットワークに関与する脳白質構造について、H26年度には患者群2群と健常群の3群で解析をおこない、論文発表、学会発表をおこなう予定であったが、研究計画を一年間延長した。その原因は、健常群においても加齢変化が大きいため患者群の精神病性の特徴を伴う重症気分障害群で被験者の年代を60歳以下とするように計画変更したことによる被験者数の集積遅延、および当初計画した被検者native-spaceでの3DーROI法を信頼性の観点から断念して解析方法を途中で変更したことによる。
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今後の研究の推進方策 |
不足している40代~50代の被験者の集積を急ぐ。しかしデータ解析と考察に要する時間を考慮し、H27年度の夏までに精神病性の特徴を伴う重症気分障害群で50代までの患者群の被験者数が15例に達しなければ、60代の被験者も含めて15例以上を確保することにする。その場合、軽度または中等度気分障害群、および健常群においても60代の被験者をそろえ、3群の年齢に差のないようにする。加齢変化の影響に関しては、TBSSのdesign matrixにおいて年齢をcovariateに入れて解析することで考慮する。TBSSを用いた白質skeletonにおけるMNI152atlasに基づくROI法では、年齢を共変量に含める共分散分析とするか否かの基準は、FA,MD,RD, AD値に対する加齢効果があるかどうか、年齢が疾患の有無・精神病症状の有無との交互作用を有するかどうかを解析対象のROIごとに調べて決定する。また、3群において、加齢変化のslopeをTBSSを用いて比較するということも検討する。3群間で脳白質・灰白質体積の有意差のある領域が存在するかどうかに関して、SPMを用いてvoxel-based morphometryも行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前頭葉ネットワークに関与する脳白質構造について、H26年度には患者群2群と健常群の3群で解析をおこない、論文発表、学会発表をおこなう予定であったが、健常群においても加齢変化が大きいため患者群の精神病性の特徴を伴う重症気分障害群で被験者の年代を60歳以下とするように計画変更したことによる被験者数の集積遅延、および当初計画した被検者native-spaceでの3DーROI法を信頼性の観点から断念して解析方法を途中で変更したことにより次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
論文執筆のための英文校正、論文投稿費用、学会発表のための旅費、宿泊費を主な使途とする。
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