研究実績の概要 |
目的:精神病症状を伴う双極性障害(PBD)と精神病症状を伴わない双極性障害(NPBD)の脳白質障害に関して、視床下部ー下垂体系の脆弱性と前頭葉ネットワークの障害の観点から調べる。 方法:年齢、性別、利き手、教育年数を一致させた40代~50台の被験者3群(PBD9例,NPBD9例,健常者22例)を対象として拡散テンソル脳画像を3Tにて撮像した。TBSS(FEWによる多重比較補正)を用いて年齢・性別を共変量とするANCOVAにより3群のFA値, MD値, RD値, AD値を比較した。 結果:PBDがNPBDに比して有意にFA低下(大鉗子の一部;両側頭頂葉~後頭葉白質)、MD上昇(左側脳梁膝部・脳梁体部・大鉗子・上縦束・下縦束・帯状束後部・前視床放線・下前頭後頭束・放線冠・皮質脊髄路、両側小鉗子~前頭葉眼窩部白質)、RD上昇(両側脳梁膝部・脳梁体部・大鉗子・小鉗子~前頭葉眼窩部白質・鈎状束・上縦束・下前頭後頭束・帯状束後部、左側脳梁体部・下縦束・上小脳脚)。PBDが健常者に比して有意にFA低下(両側脳梁体部・大鉗子・上縦束・下縦束、右側帯状束体部)、MD上昇(両側脳梁膝部・脳梁体部・小鉗子~前頭葉眼窩部白質・上縦束・前視床放線・帯状束後部、右側脳梁体部・帯状束体部)、RD上昇(両側脳梁膝部・体部・大鉗子・小鉗子~前頭葉眼窩部白質・鈎状束・放線冠・下前頭後頭束・上縦束・帯状束後部、左側前視床放線・下縦束、右側帯状束体部)。FA値, MD値, RD値, AD値いずれにおいてもNPBDと健常者で有意差を示した領域はなかった。3群間でAD値の有意差を示した領域はなかった。 考察:PBDでは前頭前野・頭頂葉・後頭葉の交連線維、および左側の頭頂葉・後頭葉と側頭葉・前頭前野の連合線維、視床と前頭前野の連合線維、小脳・皮質脊髄路などの投射線維において、軸索障害を伴わない髄鞘の障害が示唆された。
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