【背景】統合失調症は異種の病態を背景に持つ症候群である。しかし、これまでの脳画像研究は患者を均一な群として扱っており、微細な脳画像の異常やその臨床的特徴との関連が見落とされるリスクがある。そこで我々は、新たなアプローチとして、自己組織化マップによるクラスター分類を脳画像解析に応用し、同疾患の亜型分類を試みた。 【方法】統合失調症患者108名、年齢・性別をマッチさせた健常対照者121名を対象とした。被験者は構造MRIの撮像に加え、IQ、利き手など基礎情報を得た。全大脳灰白質を68の関心領域にわけ、それぞれの局所脳皮質厚を抽出した。得られた値から年齢、性別の影響を除去した値を自己組織化マップ解析に用いた。自己組織化マップ解析の後、k平均法によりクラスタリングを行った。 【結果】被験者 (229名) は、その局所脳皮質厚を用いた自己組織化マップ及びk平均法により、6つのクラスターに分けられた。作成された自己組織化マップで、もっとも統合失調症患者の含まれる割合が高かったクラスターに分類された患者は、抗精神病薬を多く内服している傾向が認められ、さらに、側頭葉や前頭葉内側部の皮質厚減少が顕著であった。また、健常者と皮質厚パターンが似ている患者)には、陰性症状が目立たない傾向が認められた。なお、クラスター間で年齢や性別、罹病期間に有意な差はなかった。 【考察】自己組織化マップによるクラスター分類を用い、脳画像情報のみで統合失調症の亜型を同定できた。また、同定された亜型は、抗精神病薬内服量や陰性症状と関連し、臨床的な意義も持つことが示された。これらの所見は、本方法によって統合失調症の異種性の神経基盤が明らかとなる可能性を示唆する。
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