研究課題/領域番号 |
24591709
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
工藤 喬 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10273632)
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研究分担者 |
田上 真次 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40362735)
森原 剛史 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90403196)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | タウ / 小胞体ストレス / アルツハイマー病 / タウオパチー |
研究概要 |
「蛋白品質管理」機構としての小胞体(ER)ストレス反応は、神経変性過程に深く関わることが、応募者らの研究が端緒となって広く認識されるようになってきている。一方、アルツハイマー病の「アミロイド仮説」による治療法開発が行き詰まるなか、タウオパチーに注目が集まっている。応募者の予備的検討で、ERストレスの負荷はタウ蛋白の増加をもたらすことが示され、タウオパチーとの関連が示唆される。本研究はERストレスを基盤として、タウの代謝を「蛋白品質管理」の観点から検討し、治療法開発に繋げる応募者ならではの発想の研究である。 当該年度は、ERストレスによるタウの合成過程に対する影響についてまず検討した。様々なERストレス(グルコース除去、Tunicamycin、Thapsigargin、DTT)は、神経細胞の種類を変えてもタウ蛋白の上昇をもたらすことが確認された。ERストレスによるタウのtranscript饒辺かは生じず、転写レベルでは変化を示さなかった。さらに、ERストレスがタウの翻訳レベルに変化をもたらすかを見るために、タウの5'UTRの有無によるタウ発現の差異を検討したが、認められなかった。ERストレス下では転写因子eIF2αの作用により、特定の蛋白では翻訳抑制機構をすり抜けて、蛋白レベルが上昇することが知られているが、eIF2αの上流であるPERKのノックアウト細胞においても、タウ蛋白の上昇を観察したことから、ERストレスはタウの翻訳に影響を及ぼさない事が分かった。 以上、今年度の検討ではERストレスはタウの合成過程には影響を及ぼさない事が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①複数のERストレスが、様々な神経細胞で確かにタウレベルを上昇させること、②タウの転写レベルでのERストレス下における変化は否定されたこと、③タウの翻訳レベルでのERストレス下における変化も否定された。以上より、ERストレスにおけるタウの上昇は合成過程の変化ではないことが示された。この結果は、計画書通りである。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、タウの分解過程に対するERストレスの影響についての検討に進む。具体的には、①tauのPulse-Chase実験:SK-N-SH細胞にCycloheximideを投与して蛋白合成を停止し、35S trans-labeled methionine and cysteineでラベルし、Glucose 除去(24-48時間)を負荷し、検討する。②tauのproteasomeにおける分解過程の変化についての検討:proteasome阻害によるtau蛋白の変化を検討する。③CHIPの変化及びtau-CHIPの結合についての検討:TauのE3 ubiquitin ligaseとして報告されているCHIP(Petrucelli, L., et al. Hum. Mol. Genet. 13:703-714, 2004)の変化を検討する。また、Tau-5(抗tau抗体)と抗CHIP抗体を用いたco-immunoprecipitationを行い、ERストレス下で両分子の結合について検討する。さらに、CHIPのsiRNA処理によるtau蛋白変化についても検討を加えておく。 ③tauのautophagy-lysosomeにおける分解過程の変化について: ERストレス下におけるautophagyの変化について検討する。SK-N-SH細胞にGFPでラベルしたLC3(autophagyマーカーで、ドットとしてで観察される)をtransfectionする。ERストレス下でのautophagyについて組織科学的に観察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
全額、消耗品購入に充てる。
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