研究課題/領域番号 |
24591710
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉山 顕次 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20426498)
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研究分担者 |
工藤 喬 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10273632)
渡邉 嘉之 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20362733)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 特発性正常圧水頭症 / 脳画像 |
研究概要 |
特発性正常圧水頭症(idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus: iNPH)は、手術により、その症状である認知機能低下や歩行障害、尿失禁が改善する事が期待できる疾患であるが、症状が改善しない患者も存在する。手術の効果を予測するため、脳脊髄液排除試験が広く行われているが、完全に手術の効果を予測することは難しい。本研究において、iNPHの患者に対し、脳機能画像、神経生理学的検査、脳脊髄液の生化学的所見を用いて、手術効果をより正確に予測することが可能かどうかを検討することを目的とした。 まず、頭部MRI画像を詳細に検討し、iNPHの特徴である、高位円蓋部の狭小化とシルビウス裂および脳室の開大を定量的に測定した。そして、高位円蓋部の脳脊髄液の体積(the subarachnoid space at high convexity/midline areas: vHCM)とシルビウス裂および脳室の体積(the cerebrospinal fluid volume in the ventricles/sylvian fissure: vVS)の比、vVS/vHCMを計算し、手術による認知機能や歩行機能の改善との相関を調べた。手術前のvVS/vHCM比は、前頭葉機能を反映する、Frontal Assessment battery (FAB)やTrail Making test Aと有意に負の相関を示し、歩行にかかる時間とも有意に負の相関を示した。また、 vVS/vHCM比の手術による変化は、歩行にかかる時間の改善と有意に相関した。以上より、iNPHによる脳の変形が小さいほど、手術によりよく症状が改善することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大阪大学医学部附属病院神経科精神科神経心理外来にて、iNPH疑いの患者に対して、認知機能検査、精神症状評価、神経学的診察、頭部MRI、脳血流SPECTなどを施行し、診断が行われている。その結果、possible iNPHと診断され、入院しタップテストを施行する患者で本研究参加の同意を取得できた患者数は16名である。この同意を得ることができた患者ごとに頭部MRIをとることはできているが、安静時fMRIを行うことはできておらず、形態解析のみである。また、脳脊髄液は採取できているが、バイオマーカー検索のためのメタボノミクス解析はまだ行うことができていない。脳磁図に関しても測定を行うことはできているが、解析には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
採取した脳脊髄液について、メタボノミクス解析を行い、また測定した脳磁図の解析も行っていく。 引き続き、外来患者よりpossible iNPHと診断された患者をリクルートし、使用できるデータを増やしていく。 健常者のデータ収集も進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究において、各患者の画像検査データは、様々な解析を行うため、容量が大きいデータとなる。そのため、保存すべきデータが膨大になることが想定され、大容量の保存用ディスクが必要である。 iNPH患者及び健常被験者への謝金が必要である。 研究成果を水頭症関連の学会で発表し、その発表時の質疑応答を研究に還元していくため、ある程度の回数の研究成果発表を想定している。 また、研究協力者である、中村昭範との打ち合わせが脳磁図データの解析をする上で重要であるため、国立長寿医療研究センターでの1,2カ月に1回の打ち合わせのための費用が必要である。
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