研究課題
特発性正常圧水頭症(idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus: iNPH)は、シャント手術により、症状の改善が期待できる可能性のある疾患であり、手術の効果を予測するため脳脊髄液排除試験が広く行われているが、完全に手術の効果を予測することは難しい。本研究において、手術の効果をより正確に予測することが可能かどうかを検討することを目的とした。iNPH患者の脳波に対し、規格化パワーバリアンス(Normalized power variance: NPV)解析を行い、髄液排除前後でのNPV値の変化量と脳機能回復と髄液排除前後での変化を検討し、シャント手術の効果予測を試みた。24人のiNPH患者を髄液排除試験や手術による改善群11人と非改善群13人に分けた。改善群において、髄液排除前と比べ、髄液排除後にα帯域のNPV値の有意な減少が内側前頭葉で見られた。非改善群において、髄液排除前と比べ、髄液排除後にα帯域のNPV値の有意な減少が背外側前頭前皮質で見られた。また、24人の患者において、α帯域のNPV値の髄液排除前後の変化について、左背側前頭葉での変化と髄液排除による歩容の改善、右前頭前野前部および左背外側前頭前皮質での変化と髄液排除による歩行速度の改善、内側前頭葉での変化と髄液排除による歩行速度の改善、右背外側前頭前皮質での変化と髄液排除によるWMS-Rの精神統制の改善、各々に有意な相関が見られた。さらに、内側前頭葉および左背側前頭葉におけるα帯域のNPV値の髄液排除前後の変化を用いて、シャント手術効果予測を行ったところ、陽性予想率は100%、陰性予想率は66%であった。以上より、侵襲的なシャント手術の結果を非侵襲的に安価に予測する客観的手法として、脳波を用いることが有用であることが示唆された。
3: やや遅れている
研究計画の中で予定されている脳脊髄液のメタボノミクス解析が進んでおらず、また、脳波を用いた解析は進んでいるが、脳磁図を用いた解析は進んでいないため。
メタボノミクス解析を進めていくようにし、また、脳磁図の解析も進めていく。引き続き、iNPH疑い患者のリクルートを行い、データを増やしていく。
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため、当初の見込み額と執行額はことなったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。本研究において、各患者の画像データや、脳波、脳磁図のデータはさまざまな解析を行うため、容量が大きいデータとなる。そのため、保存すべきデータが膨大になることが想定され、大容量の保存用媒体が必要である。研究成果を関連学会で発表し、その発表時の質疑応答を研究に還元していくため、ある程度の回数の研究成果発表を想定している。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
Neuroimage Clin
巻: 3 ページ: 522-530
10.1016/j.nicl.2013.10.009. eCollection 2013