研究課題
特発性正常圧水頭症(idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus: iNPH)は、シャント手術により症状が改善するが、すべての患者が手術で改善するわけではない。そのため、脳脊髄液排除試験を行い、手術の効果予測を行うが、浸襲的な方法であり、また手術の効果を完全に予測することは難しい。非浸襲的な脳機能検査である脳波を用いた、脳波パワーの分散値を計算する脳波NPV(Normalized Power Variance)解析は、脳波律動の状態変化を鋭敏に検出するとされている。昨年度、髄液排除試験前後の脳波にNPV解析を行う事により、髄液排除試験による脳機能変化を前頭葉の各部位で捉える事が出来る点を明らかにした。本年度は、シャント術前の脳波を用いて、手術の効果を予測できるかどうかを調べるため、シャント術による改善群9例、非改善群9例について、検討した。この2群で年齢、性差、術前の認知機能、歩行機能に有意な差は見られなかった。脳波上のベータNPVの値が、右前頭前野前方(Fp2)、右側頭部(T4)および右後頭部(O2)において、非改善群に比べ、改善群で有意に高値であった。さらに、これらの部位のベータNPVの値を用いて、髄液シャント手術の効果を陽性的中率80%、陰性的中率88%で判別できた。以上のことから、脳波NAT解析は、髄液シャント手術効果予測に有用である可能性が示された。また、シャント術により症状が改善した患者11例について、脳髄液排除試験前後でのTimed Up and Go Testを繰り返し施行した時の標準偏差と最速値が有意に改善しており、かつこの二つの変化は有意に相関していることを明らかにした。このことからシャント術により症状が改善する患者において、脳髄液排除前後で歩行機能のばらつきは少なくなることが示された。さらに、シャント術により、ほとんどのiNPH患者では精神症状が改善することも示した。
4: 遅れている
特発性正常圧水頭症患者について、20例の手術を受けた患者を想定していたが、対象患者数が目標数に到達していない。また、脳脊髄液のメタボノミクス解析が進んでいない。健常者との比較も十分に行うことが出来ていない。
特発性正常圧水頭症患者の診療を続け、研究対象患者数を増やし、すみやかに必要なデータを収集し、今まで集まったデータをまとめて解析を行っていく。
特発性正常圧水頭症患者について、20例の手術を受けた患者を想定していたが、期間内に対象患者の受診がなかった。そのため、予定していた検査に必要な費用や、研究発表に必要な経費が未使用となっている。また、健常ボランティアのリクルートが十分にできていないため、この点でも未使用額が発生している。
特発性正常圧水頭症患者を引き続きリクルートし、ある程度の症例を集めて、データの解析を行うため、そのための記録媒体にかかる費用や打ち合わせ、研究成果発表の費用が必要となる。また、検査について、脳脊髄液のアミロイドβやタウ蛋白を測定する必要があると判断しており、その検査キットを購入する費用が必要となる。
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Scientific reports
巻: 5 ページ: 1-5
10.1038/srep07775