FTDP-17にて認められた(ΔK280、P301L、V337M、R406W等)のアミノ酸置換をともなう変異を導入した全長型リコンビナントタウ蛋白を用い、タウ蛋白と14-3-3蛋白の間の結合親和性を表面プラズモン共鳴法などで定量化したところ、変異タウは野生型タウに比較して結合親和性が亢進していた。さらに、タウ蛋白をPKAによってリン酸化して同様の検討を行ったところ、結合親和性はさらに亢進したが、野生型と変異型との間に差はなかった。そこで、微小官結合部位における結合は変異によって親和性が変化するが、リン酸化Ser214部位における結合は変異によっては変化しないことが示唆された。さらに、変異タウおよび野生型タウを14-3-3蛋白存在下で重合を誘導させると変異タウの重合は野生型タウに比べて亢進していた。しかし、PKAによってリン酸化されたタウは野生型も変異型も重合性は消失した。このことから、Ser214部位のリン酸化誘導は遺伝性タウオパチーにおいて治療的有効性があることが示唆された。 タウ蛋白の分解に関しては、PSA(Puromycin sensitive aminopeptidasse)によるin vitroにおけるタウ蛋白の分解過程を検討したところ、タウ全体の分解は認められなかった。しかし、タウ蛋白のN末端を認識する抗タウ特異抗体を用いた検討では、タウ蛋白のN末端は分解された。次にタウ遺伝子を導入したHEK細胞にPSA遺伝子を導入すると、今度は細胞内タウ蛋白量が減少し、PSAに対するsiRNAを添加、あるいは酵素阻害剤を添加すると、細胞内タウ蛋白量は増加した。よって、PSA自身はタウ蛋白のN末端を部分分解するだけだが、このことが引き金となり細胞内の他の分解酵素と協同してタウの分解が制御されている可能性が示唆された。
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