研究課題/領域番号 |
24591713
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
岡部 伸幸 岡山大学, 大学病院, 助教 (70379767)
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研究分担者 |
寺田 整司 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (20332794)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 統合失調症 / 嚥下障害 / 非経口的栄養摂取 / 胃瘻 / 経鼻胃管 / 認知症 |
研究実績の概要 |
平成25年度から26年度初めにかけて、岡山県内の精神科病院を対象として、経口的に殆ど或いは全く食事を取ることが出来ず、非経口的な栄養摂取で生命維持を行っている入院患者の実態を明らかにする調査を行った。岡山県下にある20の精神科病院のうち、18病院から本研究への参加協力を得た。平成26年2月17日時点で、1ヶ月以上、非経口的な栄養摂取を継続している入院患者を調査の対象とした。岡山県下の精神科病院が有する病床数(内科病床を除く)は5235床であり、その内4658床(89.0%)を調査対象とすることが出来た。その時点での入院患者数は18病院を合わせて4,101人(男性2,007人・女性2,094人)であり、1ヵ月以上に亘って継続的に非経口的栄養摂取を受けている入院患者は221人(全入院患者の5.4%)であった。この221人のうち,187人(女性130人・男性57人)について詳細な調査が行われた。187人の平均年齢は78.3+-11.0歳であり、非経口的な栄養摂取の継続期間は、平均29.8+-31.0ヵ月(中央値は20ヵ月)であった。非経口的な栄養摂取の方法としては、胃瘻101人(54.0%)、経鼻胃管69人(36.9%)、TPN16人(8.6%)、腸瘻1人(0.5%)であった。身体拘束については、165人(88.2%)は「全く拘束なし」であったが、1日の半分以上拘束されている者も19人(10.2%)認められた。褥瘡は「有り」が23人(12.3%)、「無し」が164人(87.7%)であった。MMSE得点を見ると、0点が135人(72.2%)と全体の2/3以上を占めていたが、15点以上の者も10人(5.3%)認められた。患者の臨床像は非常に多様であった。「非経口的な栄養摂取を持続的に受けている患者」と一口に云っても、状態像は様々であるため、画一的に述べることは避けるべきである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度は今までの研究状況を把握するために文献調査を行った。慢性期の統合失調症でみられる嚥下障害について、抗精神病薬投与によるサブスタンスPの低下と嚥下障害との関連が指摘されていた。しかし、胃瘻を造設したり、長期に経鼻栄養を続けなければならない病態については、今までの文献では殆ど言及されていないことが明らかとなった。平成25年度から26年度初めにかけて「研究実績の概要」欄に記載したように、岡山県下の精神科病院を対象として、詳細な実態調査(横断研究)を行った。県下に20ある精神科病院のうち18病院が参加しており、非常に網羅的な調査を実施することができた。平成26年度は、当初、家族の意向調査を行う予定であったが、横断研究の結果を受けて、縦断的な研究を行うことが必要かつ,より有益と判断し、非経口的な栄養摂取を開始した症例を主な対象として、過去3年間の後ろ向きカルテ調査を岡山県下の精神科病院で行うこととした。計画の見直し・調査内容の検討・倫理審査手続きに想定より時間を要したため、予備調査の開始が平成27年1月末からとなった。その結果、各病院を訪問して行う本調査は平成26年度中には全く実施できない見込みとなり、平成27年度まで期間を延長して研究を行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、岡山県の精神科病院の入院患者を対象として以下の調査を行う。まず最初に、精神疾患あるいは認知症疾患に罹患した高齢者を対象として,非経口的な栄養摂取(主に胃瘻)を実施した場合と実施しなかった場合で,予後が同じか否か、具体的には、平成24年から26年の間に、非経口的な栄養摂取を開始した(或いは、開始しないと決定した)患者について、その生命予後を全例で調査する。次に、非経口的な栄養摂取の開始(あるいは,開始しないと決定した)前後における状態像の変化を明らかにする。具体的には、① 感染症は減ったか?(発熱日数,抗生剤使用日数,誤嚥性肺炎の回数を比較)、② 栄養状態は改善したか?(体重,血液検査の比較)、③ 褥瘡は改善したか? の3点につき、開始前後12週間のカルテ調査を行い、評価する。各病院を訪問して、後ろ向きカルテ調査を行う予定であり、調査終了までには半年程度は掛かると予測している。その後、結果を解析し、非経口的な栄養摂取の予後および開始前後の状態像の変化を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成25年度から26年度初めにかけて行った現状調査(横断研究)の結果を受けて、平成26年度は当初に予定していた計画を見直し、過去3年間の後ろ向きカルテ調査(縦断研究)を岡山県下の精神科病院で行うこととした。計画の見直し・調査内容の検討・倫理審査手続きに想定より時間を要したため、予備的調査の開始が、平成27年1月末からとなった。その結果、県下の病院を訪問して行う本調査は平成26年度中には実施できない見込みとなり、未使用額(次年度使用額)が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
以上の状況から、県下の精神科病院でのカルテ調査、および調査結果のまとめ、成果発表を平成27年度に行うこととし、未使用額は、その経費に充てることとしたい。具体的には、平成27年度は、岡山県の精神科病院の入院患者を対象として以下の調査を行う。まず最初に、精神疾患あるいは認知症疾患に罹患した高齢者を対象として,非経口的な栄養摂取(主に胃瘻)を実施した場合と実施しなかった場合で,予後が同じか否か、その生命予後を調査する。次に、非経口的な栄養摂取の開始(あるいは,開始しないと決定した)前後における状態像の変化を明らかにする。具体的には、① 感染症は減ったか?、② 栄養状態は改善したか?、③ 褥瘡は改善したか? の3点につき調査を行い、評価する。各病院を訪問して、後ろ向きカルテ調査を行う予定であり、調査終了までには半年程度は掛かると予測している。
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