研究課題/領域番号 |
24591728
|
研究機関 | 八戸学院大学 |
研究代表者 |
瀧澤 透 八戸学院大学, 公私立大学の部局等, 教授 (40389680)
|
キーワード | 自殺対策 |
研究概要 |
本研究「自殺対策を進める上での死因究明制度の課題とは―精神疾患・障害が把握できない理由-」は、平成21-23 年基盤研究(C)「人口動態統計による精神障害者(特に統合失調症)の自殺死亡の疫学的研究(課題番号21591531、研究代表者 瀧澤)」の研究を進める中で明らかとなった自殺対策上の課題を明らかにすることを目的として始まっており、これら2つの研究は連続している。 平成25年度は、平成24年度に「専門家個人の意見」として数名より助言を得たが、特に法医学、公衆衛生学それに自殺対策に精通している連携研究者と一緒にこれまでの論点を整理し、その結果を学会発表(3回)および紀要論文にした。これらの中間報告では、死体検案書の精神疾患の病名記入に統一性がなく警察医の記入方法にバラつきが見られる点、また、異状死の約2割が自殺であり多くは精神疾患を罹患していることを考えると、自殺予防を踏まえた死因究明は法医学だけでなく精神医学や公衆衛生学も重要である点などを強調している。 内閣府が開催している「死因究明等推進計画検討会」は、平成25年6月に中間報告、そして平成26年4月に最終報告を出し、今後は具体的に全国において「死因究明等推進協議会」が設置されていくと思われる。本研究では平成25年度に学会発表等を通して自殺対策の視点をもった死因究明の必要性を主張したが、今後も引き続きささやかながらも意義のある提言ができるよう研究を進めていく。 一方で、警察医を対象としたアンケートについては、平成25年度をもって日本警察医会が解散することが決まったため、調査を実施することを断念した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、学会発表が3回、またこれら成果を紀要論文として報告を行うなどし、自殺対策上の課題についてのいくつかを明らかにしている。 当初の研究計画では、警察医を対象とした調査を実施する予定であったが、日本警察医会が解散することとなったため調査を行うことができなくなった。しかし研究の目的を考えた場合、この質問紙調査の代わりとして、エビデンスレベルは低いものの「専門家個人の意見」をもとに、自殺死亡統計として精神疾患が把握されない構造的な要因など論点を整理しかつ報告をしていることから、達成度を「遅れている」とは判断しなくてよいと思っている。
|
今後の研究の推進方策 |
申請時の「研究計画・方法」にも記載したが、質問紙調査が実施不可能となった場合の対応として、米英系の死因究明制度をとっている国の訪問調査等を予定していた。オーストラリアのヴィクトリア州は世界で最も進んだ死因究明制度をつくりあげており、少なくない報告が日本でもされている。しかし、ヴィクトリア州の死因究明制度等について、特に精神疾患と死因究明との関連など自殺対策という観点に立ったレポートは管見にして見つけることができない。したがって、これらを明らかにすることを目的に平成26年夏に現地を訪問し資料収集や施設見学、そして可能ならインタビューを行うこととなった。 このことは研究計画の変更というより、「当初の計画どおりに進まない時の対応」として想定されていたが、短期間の準備でどこまでの成果があがるかが課題となっている。 なお、訪問調査で得られた知見は、簡易なまとめとなるが平成26年秋に開催される第73回日本公衆衛生学会や、平成27年3月に開催される第34回日本社会精神医学会で発表を計画している。今後、日本において具体的に死因究明制度が進んでいくと思われるが、自殺対策が少しでも充実するように、また、死因究明に精神医学や公衆衛生学の立場からも関わっていくことができるよう、なんらかの提案ができればと考えている。なお、国の死因究明制度の進みを意識した場合、もちろん速やかな報告や発表頻度も大事ではあるが、簡易な報告で済ませずに最終的には学術的に意義ある論文作成を目標とする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
質問紙調査の実施を予定していたが、調査対象者が所属する日本警察医会が解散となり、同会事務局の担当者との連絡調整をした際、調査実施が不可能であることがわかった。 その結果、これら調査および発表に関する予算が未消化となり次年度使用額となった。 研究計画調書の研究計画・方法に記載した通り、当初の計画どおりに進まない時の対応として、死因究明制度が最も進んでいるオーストラリアのヴィクトリア州へ訪問調査を実施することとなった。2014年8月24-30日の日程で連携研究者と共に現地にて見学や資料収集にあてることとなった。なお、これら調査は速やかに年度内に発表することを計画している。
|