本研究は、平成21-23年基盤研究(C)「人口動態統計による精神障害者(特に統合失調症)の自殺死亡の疫学的研究(課題番号21591531、研究代表者 瀧澤)」の研究と連続したものである。日本警察医会の解散などにより警察医を対象とした調査が行えなかったため、代わりに本研究の科研費申請段階での「計画当初の計画どおり進まない時の対応」として準備をしていたオーストラリア連邦ビクトリア州の訪問調査を実施することとした。 ビクトリア州はコロナーによる死因究明が「公衆の健康と安全の増進(Public Health and Safety)」に寄与している先進モデルとして広く知られているが、自殺においても極めて精度の高い原因究明および自殺予防対策を行っている。特にビクトリア州コロナー事務所にあるVSR(Victorian Suicide Register)は、ビクトリア州で発生した自殺死亡のあらゆる情報を登録・管理するデータベースである。平成26年8月26日および29日に連携研究者とともにコロナー事務所とビクトリア法医学研究所を訪問する機会を得て、VSRの開発者や担当者およびビクトリア法医学研究所副所長より、直接、話をうかがうこととができた。特に精神疾患・障害を把握する方法や死因究明と自殺対策の関連については詳細に知ることができた。また死因究明の制度が大きく異なるものの、VSRのようなデータベースを用いた精度の高い死因究明および自殺対策のシステムは、現在、死因究明制度の見直しが進んでいる日本において非常に参考になる取り組みであった。 なお、これら訪問の際のインタビューおよび提供された資料に基づいて、平成26年11月5日の第73回日本公衆衛生学会および平成27年3月6日の第34回日本社会精神医学会で発表をしている。また訪問調査の内容については学術論文の投稿を予定している。
|