統合失調症では就労や交友などの社会機能が障害されるが、その基盤として社会認知機能が注目されているが、文化差の問題などがあり、実世界で行動する能力を客観的に測定する標準化された尺度はまだ開発されていない。そこで社会認知機能のパフォーマンステストを作成した。研究の趣旨を説明し同意の得られた20・30代の男女36名(健常者20名、統合失調症患者16名)を対象とし、パフォーマンステストの実施と知的機能の簡易評価尺度JART(Japanese Adult Reading Test)、ベック自己認識評価尺度BCIS(Beck Cognitive Insight Scale)、心の状態推論質問紙SCSQ (Social Cognition. Screening Questionnaire)などを評価した。両群で有意差のあった年齢と教育年数を共変量として、各尺度の得点を共分散分析で群間比較したところ、パフォーマンステストの各項目で両群の社会的スキルの差が明確に示された(判別妥当性あり)。パフォーマンステストの多くの項目はSCSQやBCISの各項目と有意な相関があり(基準関連妥当性あり)、社会的認知が高いものは状況把握からプラン策定と実行、外顕的行動などの一連の社会的スキルの得点が高く、逆に自己認識の確信度の高いものは状況把握や事実認識などの得点が低かった。社会認知では状況把握から表出行動までの一連の過程とそれに対する自己認識が想定されるが、今回の因子分析でもそれに対応する因子が抽出された。児童や中年以後の成人や男女差、およびパフォーマンステストの評価の信頼性については今後の課題である。
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