研究課題
本研究の目的は,精神病発症危険状態(At-risk mental state; ARMS)にある思春期・青年期の患者の病態変化を前方視的に追跡し,臨床的・機能的転帰を明らかにすること,ならびに,精神病の顕在発症に至る移行例と,発症に至らない非移行例とを比較することにより,より早期段階での判別に有用な症候を,初診時(ベースライン)の各種検査結果から見出すことである。対象者の選択に際しては,統合失調症の前駆期症状スクリーニング(SIPSscreen)(Millerら,2004)を実施し,その結果,精神病の発症危険状態にある可能性が高いと判断されたものに対して,統合失調症前駆症状の構造化面接(SIPS)日本語版を施行し,Yungらの基準に基づいて精神病発症超ハイリスクであるか否かを診断している。解析対象とした22名のうち、1年後のフォローアップ検査時点で精神病への移行が確認されたのは6名、移行しなかったのは9名、治療からのドロップアウトにより状態が確認できなかったのは7名であり、参加者全体に対する精神病への移行率は約27%であった。社会的引きこもり、対人関係、就学(就業)率、娯楽活動などの項目から成るSFSで測定された社会機能面では、非移行例の方が移行例よりもトータルスコアが10ポイントほど低い傾向がみられ、特に「向社会的行動(Prosocial Activities)」において7ポイントほど低い傾向が示された。つまり、1年後時点において精神病を発症しなかったグループの方が、発症したグループよりも、ベースラインにおける社会機能が低い傾向にあった。今後はサンプル数を増やしたうえで、より長期的な追跡研究を実施すると同時に、精神病の発症に対する予防的介入のみならず、社会機能の向上に焦点を当てた介入方法についても考慮していく必要性があろう。
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