研究課題/領域番号 |
24591736
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
中村 純 産業医科大学, 医学部, 教授 (40148804)
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研究分担者 |
杉田 篤子(池ノ内篤子) 産業医科大学, 医学部, 助教 (40421333)
堀 輝 産業医科大学, 医学部, 助教 (50421334)
吉村 玲児 産業医科大学, 医学部, 准教授 (90248568)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 術後せん妄 / 前向き研究 / リエゾン精神医学 / BDNF |
研究実績の概要 |
せん妄評価尺度(DRS-R-98)日本語版の妥当性と信頼性を検討し、せん妄が他の精神疾患、特に認知症と明確に鑑別でき、その経過および重症度を評価できることを明らかにした。せん妄群と認知症群のカットオフ値は重症度得点17点(感度83%、特異度71%)、総合得点21点(感度83%、特異度79%)であった。ところでせん妄発症には手術そのものに対する不安などの心理的な要因も関与している。そこで、肝胆膵の手術予定患者(18名)を対象に前方視的に無作為にせん妄発症予防や手術そのものに対する不安の軽減を目的とした精神科的な介入を行う介入群(8名)と通常の外科医によるインフォームドコンセントを行う非介入群〈10名〉に分けて、術前の不安の程度、認知機能、血中脳由来栄養因子(BDNF)値、MHPG値、HVA値、および術後せん妄の発症率などを比較した。介入群では、およそ30分間、手術への不安を傾聴し、せん妄が一過性のものであることなどを説明した。その結果、介入群と非介入群の比較では、術前のDRS-R-98重症度得点、総合得点に有意差を認めたが、その他の背景は均一であった。介入群と非介入群の間で術後せん妄の発症率に有意差を認めなかった。せん妄発症群と非発症群の比較では、年齢、BMI、DRS-R-98の重症度、総合得点で有意差を認め、高年齢、BMI低値の人はせん妄が発症しやすいことが示された。なお、血中BDNF値は、せん妄発症群で低値傾向を示し、DRS-R-98重症度得点と血中BDNF値に弱い相関を認めた。今回の結果、せん妄発症の予防には、通常の精神療法だけでは不十分であった。なお、BMI値が低い人や膵頭部がんなどの重症例では、せん妄が発症しやすい可能性がある。他のモノアミン代謝産物、免疫関連物質については現在検討中である。
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