研究課題/領域番号 |
24591737
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
大西 哲生 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (80373281)
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研究分担者 |
吉川 武男 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, チームリーダー (30249958)
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キーワード | 統合失調症 / 予測妥当性 / 染色体転座 / 抗精神病薬 / 扁桃体 / モデルマウス / 行動実験 / 脳波 |
研究概要 |
均衡型染色体転座を持つ統合失調症症例を起点として転写因子をコードすると考えられるDISC-M遺伝子を同定し、その機能解析を継続中である。前年度までにDisc-M KOマウスが一部統合失調症様行動変化を起こすことを明らかにしてる。主な異常は恐怖条件付け不能および過活動性である。本年度は、統合失調症モデルマウスとしての正当性をさらに評価するため、そのような行動異常が抗精神病薬で改善するかどうかを詳細に検討したところ非定型抗精神病薬クロザピンの急性投与により、認知学習課題(恐怖条件付けテスト)、陽性症状関連行動異常(オープンフィールドにおける過活動性)が顕著に改善した。従ってこのマウスは統合失調症モデルマウスとして、予測妥当性(predictive validity)を満たすと考えられた。Disc-Mが引き起こす転写物制御異常によりどのような脳内ネットワークのみだれ、さらにはそれが行動異常に反映するのかを理解するため、脳内各所に記録電極を埋め込み自由行動下で脳波観察を行った。その結果、統合失調症との関連が指摘されて久しい前頭前野から記録される脳波に明瞭な異常を認めた。さらに前頭前野から側座核への連絡が不良である可能性が示唆された。c-fosタンパク質の発現を指標とした場合、恐怖条件付けにより扁桃体では野生型とKOマウスとの間に顕著な神経活動性の違いを見いだすことはできなかった。また発端者ゲノムDNAの次世代シークエンサによる解析を行い、転座点(4番側、13番側)を塩基レベルで決定することに成功し、切断点の最も近傍にある遺伝子がDISM-Mであることが、この解析からも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Disc-Mノックアウトマウスの神経ネットワーク異常を検討する方法として考えていたc-fosの発現を指標とする方法では、行動異常を明瞭に説明できる知見は得られなかったが、in vivo脳波記録法により前頭前野の異常、前頭前野-側座核のコネクティビティー異常を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
Disc-M KOマウスの統合失調症モデルマウスとしての妥当性を行動実験によりさらに追求する(特に抗精神病薬の効果)。神経ネットワーク異常をさらに明確にするため、自由行動下の脳波記録のデータを、サンプル数を増やして獲得する。染色体点座によりDISM-M遺伝子の発現にどのような影響があるのかを該当患者由来iPSC細胞を利用してしらべる。
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