研究課題
前頭側頭葉変性症(frontotemporal lobar degeneration: FTLD) の患者脳で観察される、タウ陰性ユビキチン陽性封入体の主要構成タンパクが、2006年、TAR DNA-binding protein of 43 kDa (TDP-43)であることが判明した。FTLDの発症メカニズムを明らかにしていくとともに、病態モデルマウスを用いた薬物のスクリーニングおよび薬物治療へつなげるために、TDP-43 proteinopathyモデルマウスの作製をおこなった。1) ドキシサイクリン(Dox)-off系統TDP-43 トランスジェニック(Tg)マウス: TDP-43 Tgマウスの作製では、TDP-43のK263E変異1系統、ΔNLS変異4系統、Δ12変異1系統、GFP-Δ12変異2系統の作出に成功した。全系統をDox-off系のCamK2a-tTAと交配したダブルトランスジェニックマウスは、1-2ヶ月齢よりDox不含の餌を食べさせることによりTDP-43の発現を誘導した。それぞれのTDP-43の発現を免疫組織化学染色および生化学解析で確認した。2) Dox-on系統TDP-43 Tg: 新たに作製したDox-on (CamK2a-rtTA)マウスは3系統得られたが、2系統からは遺伝子の入った子孫が得られなかった。残りの1系統は遺伝子の入った子孫が得られたので、TDP-43ΔNLS変異Tgと交配し、Doxによる発現誘導をおこなったが、TDP-43の発現は観察されなかった。現在該当遺伝子を受精卵に再インジェクションし、新たな個体を作製中である。
3: やや遅れている
Dox-on系統のCamK2a-rtTA Tgを作製し、ファウンダーマウスは3系統得られたが、2系統からは遺伝子の入った子孫が得られなかった。残りの1系統はDoxによるタンパク発現誘導が観察されなかったため、再作製をおこなっている。また、TDP-43とCamk2a-tTAの掛け合わせによるダブルトランスジェニックマウスの作製では、両方の遺伝子が入ったマウスが計画通りに産まれなかったため、解析がやや遅れている。
これまでに作製・報告されたTDP-43トランスジェニックマウスでは、フェノタイプが出るものは誕生時から後肢の異常・けいれんなどが現れている。世界中で作られているTDP-43 Tgはいずれも同じような状況にある。このような出生時からのTDP-43の過剰発現による悪影響を除くため、Dox誘導型のTDP-43トランスジェニックマウスを作製し、後天的にTDP-43を過剰発現できることを確認した。まだ加齢が十分でないため、あるいは他の理由により、神経細胞内においてTDP-43の異常凝集体は観察されていない。TDP-43の異常凝集体が確認される個体が得られたのち、FTLDの発症メカニズムを明らかにするとともに、認知機能に関する行動解析実験、およびTDP-43の異常凝集を抑制する薬剤のスクリーニングをおこなう予定である。
今年度の旅費が当初計画していた金額より少なかったため。平成26年5月に開催される第61回日本実験動物学会での成果発表時に旅費として使用する。
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