研究課題
基盤研究(C)
平成24年度は、自閉症スペクトラム障害(ASD)児10名およびnon ASD児 34名を対象に研究を実施した。神経生理学的検査として、聴覚性驚愕反射(ASR)検査・脳波事象関連電位・脳磁図検査を実施した。ASR検査では、プレパルスは含まず様々な音圧の聴覚刺激を用いた単純なASR課題と、プレパルス・インヒビションや馴化などのASRの制御機構の評価を目的とした課題の2種類の課題を実施した。また、脳波事象関連電位として、ミスマッチ・ネガティビティ検査・ガンマ・オシレーション検査・開閉眼検査も実施し、10歳以上の児童(ASD児4名, non ASD児 9名)においては、 より正確な活動源の推定を試みるために、脳磁図を用いて、ミスマッチ・ネガティビティ検査やガンマ・オシレーション検査も実施した。これら神経生理学的指標と、対人応答性尺度 (SRS)で評価される定量的自閉症特性や子どもの強さと困難さアンケート(SDQ)で評価される情緒と行動の問題などの臨床指標との関連についても検討した。単純なASR課題において、ASDではnonASDに比べ、ASRの潜時が延長し、また微弱な刺激に対するASRが増大しており、さらにASRのこれらの指標は、いくつかの自閉症特性と相関を認めた。また、ASDにおいてASRの馴化やPPIの有意な減弱は認めなかったものの、社会的動機づけといった自閉症特性は馴化と、SDQの総得点は、馴化や70dBのプレパルスにおけるPPIと関連を認めた。脳磁図検査に関しては、まだ予備的ではあるが、ASDではnonASDで認められる左側優位の側性を認めず、両側性に聴覚野近傍の賦活が亢進している可能性が考えられた。これらの研究成果を、日本神経科学会・日本生物学的精神医学会・日本生体磁気学会などいくつかの学会で報告した。
2: おおむね順調に進展している
特にnonASD児を中心に、概ね順調に被験者のリクルートを行えている。また、聴覚性驚愕反射(ASR)検査・脳波事象関連電位・脳磁図検査といった複数の神経生理学的検査を実施できている。
平成24年度にリクルートした被験者を対象に、平成25年度以降も1年ごとに同様に研究を進め、先述の神経生理学的検査、臨床検査を実施することで、経時的な変化を評価する。新規の被験者に関しては、ASD児を中心に募集を行う。脳波や脳磁図の解析に関しては、ICA法やsLORETA法、MNE法、時間周波数解析など複数の解析方法を試み、研究成果に関しては、学会や論文で発表を行っていく。
電極、皮膚前処理剤などの消耗品として50,000円、学会や研究会などでの成果発表のための旅費として140,000円、神経生理検査及びデータ整理のための研究補助員および被験者、英語論文校閲に対する人件費・謝金として840,000円、その他、測定機器の保守点検ならびに解析プログラムのライセンス料などに170,000円、合計1,200,000円の使用を予定している。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
NeuroImage
巻: 66 ページ: 594–603
10.1016/j.neuroimage.2012.09.074.
精神科
巻: 21 ページ: 672-679
http://www.ncnp.go.jp/nimh/jidou/research/research.html