研究概要 |
これまで、自閉症スペクトラム障害(ASD)児16名およびnon ASD児42名を対象に研究を実施した。神経生理学的検査として、聴覚性驚愕反射(ASR)検査・脳波事象関連電位・脳磁図検査を実施した。ASR検査では、プレパルスは含まず様々な音圧の聴覚刺激を用いた単純なASR課題と、プレパルス・インヒビションや馴化などのASRの制御機構の評価を目的とした課題の2種類の課題を実施した。また、脳波事象関連電位として、ミスマッチ・ネガティビティ検査・ガンマ・オシレーション検査・開閉眼検査も実施した。また、ASD児7名, non ASD児 20名に関しては、2年目の評価も行った。さらに、10歳以上の児童(ASD児6名, non ASD児 21名)においては、 より正確な活動源の推定を試みるために、脳磁図を用いて、ミスマッチ・ネガティビティ検査やガンマ・オシレーション検査も実施した。これら神経生理学的指標と、対人応答性尺度 (SRS)で評価される定量的自閉症特性や子どもの強さと困難さアンケート(SDQ)で評価される情緒と行動の問題などの臨床指標との関連についても検討した。 単純なASR課題において、ASDではnonASDに比べ、ASRの潜時が延長し、また微弱な刺激に対するASRが増大しており、さらにASRのこれらの指標は、いくつかの自閉症特性と相関を認めた。また、ASDにおいてASRの馴化やPPIの有意な減弱は認めなかったものの、SDQの総得点は、馴化や70dBのプレパルスにおけるPPIと関連を認めるという結果を得つつある。脳磁図検査に関しては、ASDではnonASDで認められる左側優位の側性を認めず、両側性に聴覚野近傍の賦活が亢進しているという結果を得つつある。これらの研究成果を、国内外の学会や英文誌などで報告した。
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