研究課題/領域番号 |
24591741
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
服部 直也 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (30568499)
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研究分担者 |
生駒 一憲 北海道大学, 大学病院, 教授 (70202918)
志賀 哲 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80374495)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 頭部外傷 / セロトニントランスポーター / ポジトロン CT / 定量解析 / 高次脳機能障害 / リハビリテーション |
研究概要 |
本研究の目的は、頭部外傷患者にみられる高次脳機能障害の発現において脳内セロトニントランスポーター機能異常の関与を最先端の PET装置を用いて明らかにすることである。脳内のセロトニントランスポーターの機能はC-11 DASBとポジトロン断層撮影装置を用いることによって非侵襲的に定量的評価することが可能である。 我々はC-11 DASBの合成に成功、製剤学的検討および動物実験による安全性の評価を経て、平成23年にヒトへの使用が本学倫理委員会に認可された。これを受け、昨年はヒト健常者において薬剤の純度と安全性を確認すると共に、ヒトにおけるセロトニントランスポーター機能評価のためのPET撮像プロトコールを確立、解析方法について検討した。 健常例6例での検討ではDASBは脳幹部、視床、基底核領域に相対的に多く分布しており、臨床用のPETの装置でも視覚的にトランスポーターの分布を確認することが可能であった。ただし、定量解析のためには90分間のダイナミック撮影が必要であり、このことが実際の頭部外傷患者におけるPET検査では施行困難となる可能性がある。そこで我々は、90分のダイナミックデータに変わり、15分ほどの短時間撮影でセロトニントランスポーターを簡易的に定量する方法について健常例の画像データを用いて検討した。小脳におけるDASBの集積を非特異的なDASBの分布と仮定して、脳内局所のDASBの集積の小脳の集積に対する比率で評価し、その比率が動態解析の結果と最も一致する時間について検討した結果、DASBの投与後74-90分の画像を用いて予想した値が最もよく一致していた。健常6例 での検討では、DASBは前頭葉灰白質や、白質などセロトニントランスポーターの発現の低い局所では動態解析の結果とよく一致したが、Raphe核など発現の高い局所では過小評価する傾向を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
目的通りC-11標識DASBの合成とその安全性試験に成功し、臨床検討を開始することができた。初年度に計画をしていた健常例での検討をほぼ終了し、これに基づいて次年度には頭部外傷症例の検討まで進めることができるように準備できた。また健常症例の画像データを解析することでセロトニントランスポーターの定量評価方法を確立すると共に、本方法の問題点を解明し、その対策として簡易定量法の検討まで行うことができた。 本年度後半には頭部外傷患者におけるセロトニントランスポータ機能評価も併せて実施する予定であったが、PET装置入れ替えのため6ヶ月間、装置の使用ができず患者をリクルートしての新たな撮像は現在停止している。本検査については次年度早期に再開出来る予定である。 頭部外傷患者における高次脳機能障害の評価については、従来の研究に引き続き臨床用ガンマカメラを用いた脳血流SPECTでも並行して行なっている。本年度は、20ヶ月以上の長期経過観察で症状の改善を認めない患者の脳血流SPECTを統計的に解析し、臨床的に症状の改善を認めない症例においてもテント下の血流が改善していることを解明した。本研究の成果は次年度の日本核医学会で報告する予定である。また、本研究を踏まえて セロトニントランスポーター機能評価をDASBを用いて行うに際しては、テント上下の構造物に着目して行う必要性を示唆するものである。
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今後の研究の推進方策 |
脳内セロトニントランスポーター機能の定量解析のためには90分間のダイナミック撮影が必要であり、このことが実際の頭部外傷患者におけるPET検査では施行困難となる可能性がある。対小脳比を用いた簡易的な定量法を引き続き開発し、実際の患者で90分の検査を施行できず脱落患者が生じた場合に備える。当初予定していた半導体PET装置を用いた検査は、C-11の使用に関する検査室の認可に時間を要する可能性が高い。当面は、臨床用PET装置を用いてセロトニントランスポーター機能の評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の研究成果から、セロトニントランスポーター機能の 定量解析のためには90分間のダイナミック撮影が必要であり、このことが実際の頭部外傷患者におけるPET検査では施行困難となる可能性が示唆された。この問題の解決のため短時間撮影画像を用いた簡易定量法を検討してきたが、本方法の妥当性については海外の動態解析の専門家との議論が必要である。次年度の研究費は、画像検査、血液検査費用、薬剤の材料費、自主臨床試験の保険に加え、議論のための国内外の 学会への参加費用、動態解析の専門家との協議に関わる旅費、実際の解析を行う補助員の確保のために使用する予定である。
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