研究実績の概要 |
背景:拡張障害心不全患者において、心臓交感神経機能評価は包括的心リスク評価に寄与すると考えた。 目的:左室拡張能と心臓交感神経機能障害の関連を明らかにすること。 方法:対象は2012年から2015年12月までに当院において、左室駆出率が40%以上に保たれた心不全で11C-ハイドロキシエフェドリンPETを施行した患者(41例、年齢64±14歳、男性27例)とした。拡張障害の重症度は心エコーで評価した。11C-ハイドロキシエフェドリンPETで撮影した心筋イメージから心臓交感神経機能を定量評価するために、2012年度の研究計画で我々が独自に開発したプログラムを使用しRetention index (RI)を算出した。 結果:拡張能が中等度から高度障害の患者 (n=19) では拡張の正常から軽度障害患者(n=22)に比べてRIは有意に低値で(0.075 ± 0.018 vs. 0.092 ± 0.023 /min, P = 0.01)、17領域でのcoefficient of variationで評価した交感神経のばらつきは高値であった(18 ± 8% vs. 14 ± 5%, P = 0.04)。臨床背景を含んだ多変量解析により、RIの低下(adjusted odds ratio [OR] per 0.01 /min, 0.65; 95% confidence interval [CI], 0.38 to 0.99, P = 0.043)とばらつきの高値(adjusted OR per 5%, 1.86; 95% CI, 0.048, P = 0.048)が中等度から高度拡張障害心不全の予測因子であった。 結論:本年度の研究によって、心機能が比較的保たれた拡張障害心不全患者において心臓交感神経の分布低下およびその不均一な状態が拡張能障害の重症度と関与することが示された。
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