研究課題/領域番号 |
24591749
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
長嶺 竹明 群馬大学, 保健学研究科, 教授 (90180520)
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キーワード | C型慢性肝炎 / 3剤併用療法 / 貧血 / 大気マイクロPIXE |
研究概要 |
難治性C型慢性肝炎に対するペグインターフェロン+リバビリンの2剤併用療法による治癒率は50%程度である。一方、インターフェロン+リバビリン+プロテアーゼ阻害剤の3剤併用療法では、治癒率は70%以上に達するが、貧血などの副作用も高頻度で、かつ重症化する。本年度はインターフェロン治療による貧血の病態解明を目的に、赤血球内元素分布の変動を大気マイクロPIXE(Particle Induced X-ray Emission)分析システムを用いて測定した。 2.対象及び方法:インターフェロン+リバビリンの2剤併用及びインターフェロン+リバビリン+プロテア-ゼ阻害剤の3剤併用による治療が行われたC型慢性肝炎患者12例を対象として、抗凝固剤(EDTA2Na)入り採血管で採血し、当教室で確立した方法でPIXE測定用赤血球試料を作成し、大気マイクロPIXEにて測定してた。 3.結果:健常者では、各元素とも赤血球内に小顆粒状に分布していた。2剤併用療法の赤血球では、Cl,K,Sは斑状に集簇する傾向をみとめた。Na,K,Pは小顆粒状のまま細胞辺縁に分布する傾向を示した。3剤併用療法の赤血球では、細胞全体にClの斑状集簇を認めた。K,Caは細胞の辺縁に輪状に集簇する傾向を認めた。S,P,Naはインターフェロン+リバビリン治療と同様な分布を示した。Feの分布は健常者では細胞全体に小顆粒状に分布するが、インターフェロン+リバビリン治療では細胞の周辺に分布する傾向を示し、インターフェロン+リバビリン+プロテア-ゼ阻害剤治療では、その傾向が一層顕著であった。以上の成績から、インターフェロン+リバビリン治療によって、赤血球の元素分布は細胞の辺縁へ分布する傾向を示し、インターフェロン+リバビリン+プロテア-ゼ阻害剤の3剤併用では、その傾向が顕著となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的はC型慢性肝炎の3剤併用療法における副作用である貧血の病態解明である。2剤併用療法、3剤併用療法の赤血球の元素分布を大気マイクロPIXEで測定し、両群における元素分布の変動を比較することで、貧血の病態を明らかにした。その結果、イオウ(S)は、2剤併用で経度増加し、3剤併用では明らかな増加をみとめた。この成績は併用療法によって、活性酸素が誘導され、細胞膜を傷害するとの説を裏ずける成績であった。一方、鉄(Fe)の分布に変化を認めなかったことから、Fe欠乏性貧血の関与は否定的であった。
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今後の研究の推進方策 |
難治性貧血の病態解明のため、各種血液疾患症例の赤血球の元素分布を大気マイクロPIXEで測定する。また、細胞内亜鉛の生理活性を研究する目的で、ZIP13発現細胞における元素分布を大気マイクロPIXEで測定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
注文した薬品が会計年度内に納品されなかった。 改めて薬品を購入する
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