研究実績の概要 |
平成26年度は慢性肝疾患症例の貧血の病態解明のために、C型慢性肝炎3例、肝硬変5例、肝臓癌3例、および健常者4例の肘窩静脈から採血し、当教室で確立した方法によってマイクロPIXE測定用赤血球試料を作成し、赤血球中元素分布を原子力機構・高崎研究所の大気マイクロPIXEで測定した。結果及び考察:1。健常者では、Cl, P, Kは赤血球の形状に一致してドーナツ状の分布を認め、慢性肝炎では健常者と同様な元素分布を認めた。2。K, Clは、肝硬変では境界明瞭で円形状に凝集して分布し、肝臓癌では境界不鮮明な凝集像を呈した。3。Feは顆粒状に集簇して分布し、健常者と肝疾患群で明らかな差異を認めなかった。 4。Pは健常者、慢性肝炎、肝硬変ではドーナッツ状に分布し、肝臓癌では不規則に凝集する傾向を認めた。今回の成績から、慢性肝障害の進展にともない、赤血球のK,Clは凝集し、ドーナッツ構造の消失を認めたことから、細胞膜の変化をきたすことが示唆された。 平成24年、25年度はインターフェロン+リバビリン(2剤療法)、及びインターフェロン+リバビリン+テラプレビル(3剤療法)で高頻度に合併する貧血の病態をマイクロPIXEを使用して解明した。その結果、赤血球中Cl,S,Kは健常者では辺縁に分布し、ドーナツ様を呈していた。インタ-フェロン単独では班状に集簇していたが、2剤療法、3剤療法治療症例の赤血球では班状構造が崩れ、分布の少ない血球も見られた。2剤療法、3剤療法治療症例の赤血球では健常者と比較しMnが減少、Cuが増加する傾向にあった。これらの成績から、2剤療法、3剤療法治療症例に合併する貧血の病態と元素分布との関連を示唆された。
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