研究課題/領域番号 |
24591751
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
森 哲也 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 助教 (40397287)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 放射性薬剤 / PET / 自動合成システム |
研究概要 |
本研究では、薬剤開発研究者が新薬開発を行う上で渇望している高い汎用性とメンテナンス性を兼ね備えた多目的かつ低価格な放射性薬剤自動製造システムの構築を目的として、これまでに開発してきた放射性液体ハンドリング技術と融合した放射性薬剤標識合成ユニット等自動合成システムの制作を試みる。本システムにより、研究者のフレキシブルな発想で装置のレイアウト設計が可能となるだけでなく、自動化により放射性薬剤の安定供給および作業者の負担軽減が期待され、有望な薬剤の基礎研究から臨床への展開を推進できると考えられる。本研究では、主にPET(ポジトロン断層撮影)用F-18(フッ素18)標識薬剤の合成を自動化するためのシステム製作に取り組み、ホビー用ヒューマノイドロボットに使われるコントロールボードとサーボモータを利用して、滅菌ディスポシリンジや三方活栓、タイマー付温調器がそれぞれ制御可能なユニットを応用し、スタンダードPET核種であるF-18標識薬剤の製造に適した装置のデザイン、およびその実用性の検討を行った。対象薬剤はPET検査で最も使われているグルコース代謝イメージング薬剤のF-18標識FDG、ならびに酢酸代謝イメージング薬剤として注目されているF-18標識フルオロ酢酸(FA)を選択した。FDGおよびFAの合成は、それぞれ既報の方法を参考に、シリンジユニットと三方バルブユニット、タイマー付温調器を有した標識反応装置で実施した。送液部には、ディスポ製品を用い、収率に重大な影響を及ぼすラインにはデッドボリュームの少ないチューブを利用した。その結果、FDGは放射化学的収率29%、FAは放射化学的収率51%でともに放射化学的純度97%以上と高純度な薬剤を得ることに成功し、本システムの実用性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
装置はこれまでの知見と経験をもとにF-18標識合成反応の試薬数や送液工程を考慮して設計し、これと並行して動作プログラムの作成を行った。次いで、非放射性物質によるコールドランを実施し、送液時に生じる問題点の抽出および安全性確認をした後、少量の放射性物質によるホットランを試行した。F-18標識薬剤合成の前工程であるF-18フッ素イオン濃縮精製では、試薬の導入方法を模索した結果、バルブユニット3個分と従来機に比べよりコンパクトな設計が可能となった。各薬剤の合成は、シリンジユニットと三方バルブユニット、タイマー付温調器で構成した装置で条件検討し、FDGは放射化学的収率29%、FAは放射化学的収率51%でともに放射化学的純度97%以上と高純度な薬剤を得ることに成功した。これにより本年度の目標であったF-18標識薬剤製造が達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
より多様なPET薬剤製造に対応するため、HPLC精製システムの導入および、注射剤への調製を考慮した液状調製システムの製作に取りかかる。
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次年度の研究費の使用計画 |
液状調製システムは有機溶媒を取り除く必要性があり、溶媒留去工程および固相抽出法による精製工程の自動化を図る。
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