研究課題/領域番号 |
24591751
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
森 哲也 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 助教 (40397287)
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キーワード | 放射性薬剤 / PET / 自動合成システム |
研究概要 |
本研究では、薬剤開発研究者が新薬開発を行う上で渇望している高い汎用性とメンテナンス性を兼ね備えた多目的かつ低価格な放射性薬剤自動製造システムの構築を目的としている。これまでにホビー向けヒューマノイドロボットに使われるコントロールボードとサーボモータを応用して、滅菌済ディスポシリンジや三方活栓、タイマー付温調器がそれぞれ制御可能なユニットを設計し、平成24年度はスタンダードPET核種であるF-18の標識薬剤に対応した装置開発を行った。その結果、複数の薬剤を合成することに成功したが、F-18標識フルオロ酢酸([F-18]FA)の合成で放射化学的収率に顕著なバラツキがみられた(12-51%)。そのため、本年度はプログラムおよび装置構成を見直して収率の安定化を目指した。 [F-18]FAの合成は(1)[F-18]フッ素イオンの濃縮精製(2)前駆体のF-18標識反応(3)NaOH水溶液による加水分解反応の順で行ったが、標識反応後の減圧時に不用意な反応液の損失がみられたため、この工程が収率の変動に大きな影響を及ぼしていると考えられた。この点を改善するため、加熱反応後の大気開放時における動作プログラムの変更および真空ポンプによる減圧調整を行った。また、装置への負担軽減を目的とした装置構成の再構築を実施した。その結果、放射化学的収率が45-55%と安定して[F-18]FAを供給することに成功した。この手法は、他のF-18標識化合物にも適用できると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、F-18標識合成反応の試薬や送液工程を考慮して再設計し、これと並行して動作プログラムの改善を行った。その結果、放射化学的収率が安定し、自動合成装置として有用性が高まった。無菌注射剤への製剤化を考慮した液状調製システムの開発では、液組成や容器材質、ならびに回収率向上のための要素を考慮し試作機の製作をしているところである。
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今後の研究の推進方策 |
多様なPET薬剤の自動合成に対応するため、HPLC分取精製システムの構築ならびに無菌注射剤への製剤化を考慮した液状調製システムの製作を行う。液状調製システムでは、有機溶媒の速やかな留去と容器からの高回収率が要求されるため、加熱や減圧方法を調整し、液量を制御する。
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次年度の研究費の使用計画 |
液状調製システム作成のための部品調達に時間を要するため、次年度で調達を行う。 液状調製システムに必要な加熱容器に使用する予定である。
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