研究課題/領域番号 |
24591756
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
片岡 正子 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10611577)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 乳腺 / 乳癌 / MRI / 拡散強調画像 / カラーマップ |
研究概要 |
本研究は、造影剤を用いずに腫瘍の描出が可能な拡散強調MR画像及びapparent diffusion coefficient (ADC)値を用い、多様な乳腺病変の特徴及び悪性度の高いと予想される領域を可視化し、質的診断および組織標本採取に役立つ診断支援プログラムを開発し臨床応用することを想定している。特に初年度24年度については、カラーコーディングプログラムの開発および病理所見との比較検討によるプログラムの修正・改良に焦点を置いた。 ただし、実際に撮像した画像を用いて検証すると、画像の段階での問題点もいくつか上がってきた。一つ目には、高いb値の画像では背景のノイズの影響により拡散強調画像高信号領域の自動抽出が難しい部分があり、ADCを計算するにあたってノイズの影響を考慮する必要があると思われたことである。2つ目には、従来のb値が0および1000 s/mm²の値から計算したADC値では、特にb値が低い部分での組織潅流の影響が排除できないということが最近の研究でわかってきており、灌流の影響(Intraboxel incoherent motion:IVIM)を分けて考えるという研究手法が特にこの1、2年で急速に発達してきたことである。これについては、学会・研究会等での情報収集とあわせて研究協力者であるDenis Lebihanらとも議論を重ね、プログラム処理に先立ってやるべき事項として、上記のノイズの影響の修正法およびIVIMを考慮した解析法を導入した。研究用に得られた多数のb値を用いた乳腺MRI撮像データを用いて、良悪性病変での検証を行い、prelimnaryではあるが、病変表示のmap作成まで行うことができた。これについてはH25年度の4月に学会発表予定であり、論文も投稿予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初設定した初年度24年度の計画では、カラーコーディングプログラムの開発および病理所見との比較検討によるプログラムの修正・改良を目標としていたが、実際は解析前の画像のノイズの問題や灌流の影響を考慮する等の段階で予想以上に検討課題が判明し、自動的なカラーコーディングプログラムや、病理との詳細な検討までには至っていない。その点で当初計画よりは若干遅れはあるが、H24年度の作業は診断に真に役に立つプログラムを作成するために必要なステップであり、学会発表・論文につながる成果を生み出している。これらの結果を踏まえてカラーコーディングプログラムの改良や病理との検討をH25年度も継続して取り組んでいく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初は初年度で達成予定であった、病変を自動的に抽出、ADC値に基づき悪性度が高いと予想される領域をsegmentationしカラーコーディング表示するプログラムの開発及び病理診断との比較検討を行う。初年度の結果から得られた新たな課題として、従来の臨床のルーチーンで得られている拡散強調画像データ(b値0、1000 s/mm²)で十分mappingができるのか、それとも多数のb値で得られた詳細な値でないと計算ができないのか?もしくは、ルーチーン画像でもよいがさらにb値が1500等高い値でないといけないのか(b値が低いとT2高信号領域の影響が排除できない)、という点については、病理との比較検討が必要と思われる。今年度より、多数のb値での乳腺病変撮像データも研究の一部として開始されるため、必要であればより多くの症例での検討が可能となる。 病変はなるべく自動抽出を試みるが、診断能が許容できない範囲で低下しうる場合には、読影医の判断で関心領域(ROI)を確定する等の最小限の介入を行う手法も選択肢として考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度も引き続きMatlabを用いて検討を重ねるため、ソフトウェアの更新費用が必要。また、データ統合・統計関係のソフトウェア購入、および情報収集・結果発表のための国内外学会・研究会参加費用に使用の予定である。
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