研究課題/領域番号 |
24591756
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
片岡 正子 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10611577)
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キーワード | MRI / 拡散強調画像 / 乳癌 |
研究概要 |
本研究は、造影剤を用いずに腫瘍の描出が可能な拡散強調MR画像及びapparent diffusion coefficient (ADC)値を用い、多様な乳腺病変の特徴及び悪性度の高いと予想される領域を可視化し、質的診断および組織標本採取に役立つ診断支援プログラムを開発し臨床応用することを目標としている。本年度は、前年度の成果として多数のb値から得られる拡散強調画像データを用いADCのみならず低いb値から得られるIVIMや高いb値から得られるKurtosisの影響を合わせて近似算出する方法につき、いくつかの手法を検討した。病変ごとのROIベースでの検討は、新たな手法を用いた結果を論文投稿中である。国際磁気共鳴医学会(ISMRM)および欧州放射線学会(European Congress of Radiology)にて、拡散強調画像およびそれから得られるIVIM,Kurtosisの有用性また、これらを複合して作成したColour mapの有用性についても発表を行った。ピクセル毎の近似および算出法については、さらにノイズの影響が懸念されることから、それらを克服する方策を検討中である。これらの課題については、共同研究者のDenis Lebihan教授およびプログラムの専門家である大阪工業大学情報科学部の矢野浩二朗准教授の協力を仰ぎながら論文化に向け検討中である。 多数のb値から得られる拡散強調画像については、手法が未完であるため、先に比較的手法が確立している臨床でルーチーンに撮影している拡散強調画像を用い、ADCmapと病理の比較に取り組んだ。ADC値は、病理組織でのcellurarityと相関するということが報告されているが、他にもfibrosisやnecrosisの存在により左右される。今回は、そうした影響が比較的少ないと考えられる粘液癌を対象にADC値とcellularityやその他の病理学的なマーカーとの関係を比較検討し、ADC値と増殖能の指標であるKi-67 indexとの相関を発見、学会発表および論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プログラミングの確立については、本年度は悪性度を反映されたcolor mapの表示をふくめ学会発表まで行うことができ、当初の目的についてはある程度達成されたと考える。ただし、ノイズの処理やADC以外の新たなパラメーターの閾値設定などいくつかの課題は残されている。病理所見との比較検討については粘液癌という比較的単純化が可能なモデルにおいて従来のcellularityのみならずKi-67 Indexとの相関を見出し、拡散強調画像に基づく情報が質的診断・リスク層別化および診療支援に役立つ可能性を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年は、上述の多数のb値から得られる拡散強調画像データを用いた近似法の確立を目指す。また、ピクセル毎の近似および複数のパラメーターを合わせたmapの作成法についても確立を目指す。これらの解析法の検討を基に、粘液癌のみならず一般的な浸潤癌を初めてとして、DCIS等良性悪性含めた様々な病変に解析を適応し、病変全体のみならず、病変内の病理像のheterogeneityを反映したmapの描出を目指す。Mapのみならず、histogramなどの定量値を用いたheterogeneityの定量解析もあわせて推進し、造影で得られたkineticsの違いなどと合わせて検討する。造影画像(もしくは拡散強調画像のうち毛細血管の血流を反映したIVIM)による血流情報と、拡散強調画像による構築に関する情報は相補いあう点があると予想されるため、これらの組み合わせにより診断能の改善を目指す。とくに本年は最終年度であるため、学会および論文での発表にも重きを置く。
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次年度の研究費の使用計画 |
成果発表についての国際学会発表予定が、次年度にずれ込んだため。 2014年5月の国際学会(ISMRM)発表用の費用。
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