研究課題/領域番号 |
24591758
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
下瀬川 恵久 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30370258)
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研究分担者 |
加藤 弘樹 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20448054)
渡部 浩司 東北大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (40280820)
礒橋 佳也子 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50598604)
金井 泰和 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60397643)
巽 光朗 大阪大学, 医学部附属病院, 講師 (60397700)
畑澤 順 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70198745)
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キーワード | (1) ホウ素中性子捕捉療法 / F-18 FBPA / PET / B-10 PA / 微量元素分析 |
研究概要 |
① 正常ラットおよび神経膠腫担癌ラットモデルにおけるF-18 FBPA PET測定 平成24年度は正常ラットでのF-18 FBPA PETによる放射能濃度とB-10 PA投与後のホウ素濃度の微量元素分析との相関について追試を行い、深部臓器である膵臓において集積の過小評価が改善されることが明らかとなった。また、神経膠腫担癌ラットモデル(RGC-6細胞移植)におけるF-18 FBPA集積評価を行った結果、PETによるホウ素濃度推定は約25%の過大評価であった。原因として腫瘍内集積の不均一性が影響した可能性が考えられた。 ② 健常者および担癌患者におけるF-18 FBPA PET測定 平成25年度はさらに健常者のF-18 FBPA PETの全身の動態測定を行った。健常者6名(男性:女性=4:3、年齢32.5±16.1歳)に対し、F-18 FBPA(投与量:199.0 ± 17.0 MBq)を肘静脈より投与し、PET/CT装置(Eminence BCT/X、島津製)を用いて静注60分後まで繰り返し7回撮像した。全身の13臓器におけるF-18 FBPA濃度を百万分率(ppm)単位に換算し、体内分布の変化を検討した。その結果、脳、膀胱を除く11臓器への集積は静注5~6分後に最大となり、以後速やかに減少した。脳のF-18 FBPA濃度は、静注後徐々に上昇し、23分以降にプラトー状態となった。F-18 FBPAは時間とともに膀胱へ排泄された。中性子捕捉療法における実際のB-10 PA投与法を元に、F-18 FBPA PETから推定した静注1時間後のB-10濃度は膀胱を除く臓器で0.65~5.72 ppmと非常に低かった。以上より、病変に隣接する正常組織への中性子照射による合併症の発現の可能性は少ないことが示唆された。 平成25年度後半からF-18 FBPAの臨床応用を開始している。本自主臨床研究は大阪大学医学部附属病院倫理委員会から承認されている。平成26年3月31日までに10名の担癌患者において12検査を施行した。集積の程度について現在解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度までの正常ラットのF-18 FBPA体内分布測定および神経膠腫皮下移植モデルによるF-18 FBPA集積の評価については実験が順調に終了している。また、健常者のF-18 FBPAの体内分布測定については、年度内に順調に終了した。特異的集積臓器に関する解析も行い、正常組織への中性子照射に関する合併症の発生を推測する点について結果が得られている。また、正常のF-18 FBPA体内分布に関する健常データベースの構築も行った。さらに、担癌症例へのF-18 FBPA PET検査も開始され、既に10名以上を検査していることから、年度ごとに設定された目標以上に達成していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
① 担癌症例におけるF-18 FBPA PET集積の評価 平成26年度は最終年度であることから、30例を目標として担癌症例におけるF-18 FBPA PET集積の評価を行う。現在、中性子捕捉療法を前提とした症例のPET検査を蓄積中であるが、腫瘍の種類や発生部位、病理学的特徴に基づきF-18 FBPA集積の特徴を解析する予定である。 ② F-18 FBPA PET撮像法および腫瘍集積評価法の標準化 F-18 FBPA PETは中性子捕捉療法の臨床において唯一の画像に基づいた評価方法であるが、その撮像方法や腫瘍集積評価法は標準化されていない。特に、腫瘍の集積評価は、腫瘍対正常比(T/N比)、腫瘍対血液比(T/B比)に加えて、画素最大値(SUVmax)や画素平均値(SUVmean)の使用など、研究者ごとに異なる指標を用いている現状があり、F-18 FBPA PETの中性子捕捉療法への臨床応用において最大の問題点となっている。体幹部ファントムを用いた集積比の評価に加えて、臨床症例のF-18 FBPA PET画像を検証し、腫瘍集積指標の最適化を試みる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は動物実験の追試および健常者のデータ収集を主体として研究を進めた結果、旅費に関する支出の割合が低下した。また、健常被験者の募集業務を外部委託し、必要経費をその他の項目で充填したが、予想に比べて順調に募集が完了したため、この部分での支出の割合が低下した。以上より、次年度使用可能な助成金が発生した。 平成26年度は最終年度であり、臨床PET検査に係る費用と結果発表に必要な旅費を中心に助成金の支出を行う予定である。国際学会において演題が採択されているほか、また国内学会でも発表する予定である。また、PET検査の標準化に関係したファントム実験や解析関係の必要経費も見込まれている。
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