本研究は糖尿病モデル動物の脳における代謝異常を検出し画像化することを目的としている。平成26年度は1型および2型糖尿病モデルマウスを用いてグルコースの代替エネルギー基質とされる14C標識乳酸の取込みおよび、1型糖尿病モデルマウスにおいてはインスリンによる治療を行った際の14標識乳酸の取込み、2型糖尿病モデルマウスにおいては平成25年度に引き続き薬剤治療の効果を14C標識デオキシグルコースの取込みを指標に検討を行った。 14C標識乳酸の取込みはグルコース代謝との比較を容易にするため、18F標識フルオロデオキシグルコース(FDG)とのダブルトレーサー法とし、オートラジオグラフィー法を用い脳内分布を測定した。STZ誘発1型糖尿病モデルマウスにおける18F標識FDGの取込みは脳、心筋、大腿筋で著明に低下した。一方14C標識乳酸の取込みは有意な変化を認めなかった。さらに18F標識FDGの取込みは脳の領域ごとに局在分布を示したのに対し、14C標識乳酸の取込みは比較的均一な分布を示した。2型糖尿病モデルマウスにおける18F標識FDGの取込みは1型糖尿病モデルマウスと同様に著明な低下を示したが、14C標識乳酸の取込みは脳内の多くの領域で取込み増加を示した。病態の重症度との関連も検討する必要があるが、2型糖尿病モデルマウスではより多くの乳酸をグルコースの代替エネルギー基質として利用している可能性が示された。 またインスリンにより治療効果を認めた1型糖尿病モデルマウスにおいて脳における18F標識FDGの取込みはコントロールの70-100%まで回復した。一方、心筋における取込みはコントロールの200%と著明な増加を認め、大腿筋では逆に35%低下した。14C標識乳酸についてはインスリン治療により心筋での取込みが増加し、末梢組織におけるエネルギー基質の変遷も明らかとなった。
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