研究課題
本研究は、320列マルチスライスCTを用いて胃癌と大腸癌の腫瘍のvolumetryを行い、動脈性増強効果と病理学的因子、予後について比較検討するものであった。ただし胃癌については腫瘍部と正常部の分離が困難であったため大腸癌のみを本研究の対象とした。3DCT(CT colonography:CTC)が施行された大腸癌57症例のうち、早期癌、非造影症例を除外した33症例の進行大腸癌を対象とした。全例、腫瘍の良好な描出のため撮像直前に自動炭素ガス注入機を用い、検査対象の消化管内腔を十分拡張させ、鎮痙剤(抗コリン剤)を投与した。経静脈性非イオン性高濃度ヨード造影剤投与下に至適撮影タイミングを得るためボーラストラッキング法を用い、動脈優位相、多時相高精度腫瘍容積データを収集した。今回、動脈後期相のデータを用い、腫瘍のvolumetryは昨年報告書と同様の手法で行った。動脈性増強効果の指標として、①単純CT、②造影CT動脈相、③造影CT後期相それぞれにおける腫瘍の体積、腫瘍の平均CT値を用いた。予後に関しては平均観察期間685日の観察を行い、無再発群28例と再発群(肝転移、リンパ節転移、局所再発)5例において比較を行った。無再発群における腫瘍体積の中央値は①23.5mm②23.2mm③25.2mm、平均CT値の中央値は①39.2HU②68.2HU③78.8HUであった。再発群における腫瘍体積の中央値は①25.2mm②23.9mm27.8mm、平均CT値の中央値は、①32.4HU②61.7HU③83.5HUであった。Wilcoxonの順位和検定では、単純CTにおける平均CT値のみで、再発有群のCT値が無再発群よりも有意に低かった。本研究では単純CTのみで再発群の腫瘍のCT値が有意に低かった。病変を構成する組織構築に両者の違いが予後と関連する可能性が示唆された。
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臨床と研究
巻: 92 ページ: 192-196
画像診断
巻: 59 ページ: 1466-1474