延長を行った平成27年度は、主に心筋炎へのMRIによる心筋遅延造影法の評価について検討を行う予定であった。予定どおり平成27年度は、高安動脈炎における劇症型心筋炎のMRIによる心筋遅延造影法の評価を行い、同時に病理学的検討を行った。 一般に、心筋炎においても、虚血性心疾患や心筋症と同様に心筋遅延造影が認められ、心筋は強い繊維化や壊死などの強い心筋障害が存在することが予想される。しかし、一方、認められない場合は、心筋障害が軽微なことが予想される。 今回の検討により、高安動脈炎における心筋炎では心筋遅延造影を認めない場合は比較的予後が良好であり、病理学的に心筋の不可逆的な損傷がみられてないことが明らかとなった。それにより高安動脈炎における劇症型心筋炎に予後予測がある程度可能であることが示唆された。それらの知見をMRI、病理画像を対比させ論文として発表した。 高安動脈炎における劇症型心筋炎は特に欧米では非常にまれな病態として知られている。高安動脈炎は本邦では比較的よく見られ、高安動脈炎に関する知見を本邦から発信する意義は大きい。また高安動脈炎における劇症型心筋炎の画像所見はまだ報告が少ない。本疾患を世界的な循環器系の雑誌であるEur Heart J.(impact factor:15)に発表し、広くこの知見を知らしめたことは大変有意義であり、本疾患の患者に寄与するものと考えている。今後もこの研究を発展させ心臓の画像診断法の確立に寄与したい。
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