心臓4次元CTによる術前ナビゲーションシステムの開発にむけて、本年度はこれまでに最適化にむけてプロトコールを調整してきたものを実際の臨床に応用した。心臓疾患術前の患者においては腎機能の低下を有する場合が多い。そのため造影剤の多量の使用は造影剤腎症を誘発する可能性があり、可能なかぎり低減が臨まれる。その一方で、術前のCTでは心臓だけでなく、大動脈~大腿動脈までの血管の情報も重要である(送血、脱血のシミュレーション)。面検出器CTでは検査の途中で、ヘリカル・ピッチを変更できるバリアブル・ピッチ機能が利用可能である。これを用いることで心臓のスキャンと大血管のスキャンを二回に分けて行う必要性がなくなり、この手法を心臓手術術前CTに応用することで心臓と大血管の二つの構造を評価した。我々は胸部を低ピッチ/心電図同期スキャンを行い、腹部以下を高ピッチ撮影した。これにより1mL/kg程度の少ない造影剤量で術前シミュレーションに必要な情報(冠動脈、心臓の動態、大血管からアクセスルート)を撮影できることを明らかにした。平成25年度に低管電圧CTによるCTの低侵襲化を可能とし、平成26年度にはさらなる低侵襲化(造影剤低減、X線被ばく低減)が実現できた。H27年度では心臓、血管の包括的4次元CTを臨床に応用し、その適応を確立することができた。
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