フェーズコントラストMRI(PC-MRI)による肺高血圧患者の治療効果評価法の開発についての最終報告である。①MR機器によるPC-MRIの再現性の検討に関して、症例数を増やし再検討した。健常ボランティア10例対象に2施設のMR機器でPC-MRIによる肺血流(肺動脈本幹、左右肺動脈)を評価した。肺動脈本幹、左肺動脈では面積や速度の計測値に有意差が見られたが、右肺動脈では有意差はみられなかった。PC法での血流評価では対象血管の直交断面での測定が真の値に近くなる。肺動脈本幹や左肺動脈は血管長が短く湾曲しているため直交断面を得るのが難しいが、右肺動脈は長くまっすぐ走行しているため誤差が少ないと考えられる。血流量や時間流量曲線から得られる指標はいずれの血管でも有意差はなく、ブランドアルトマンプロットでも95%信頼区間内に位置した。よってPC法による血流量測定や時間流量曲線は異なるMR機器でも再現性のある評価が可能と考えられる。②肺高血圧合併は間質性肺炎急性増悪のリスクと報告されている。我々は間質性肺炎の急性増悪とPC法により測定した肺血流量の関連について検討した。PC法により肺血流の測定歴のある43例を後方視的に評価した。MR撮影後に急性増悪を起こした群(8例)と起こさなかった群(35例)に分け比較検討した。急性増悪群では肺動脈本幹の平均流速、平均血流量が有意に低い値であった。肺血流量が低い間質性肺炎患者で急性増悪の可能性が高く、肺高血圧症合併と間質性肺炎急性増悪の関連を裏づける結果となった。
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