研究課題
アルツハイマー病脳における11C-PiB PET画像によるアミロイド蓄積の定量的評価において、脳萎縮による部分容積効果の結果生じる蓄積量の過小評価を補正する必要がある。これは、PETの空間解像力が4mm程度であるのに対し、大脳皮質の厚さは正常でも平均3mm台のためである。通常、この補正にはMRIが用いられてきたが、特に高磁場MRI装置では、幾何学的歪みのために、PET画像との位置登録に誤差が生じる可能性が指摘されてきた。今年度の検討では、PET/CT装置で得られる、高速で撮像可能であり幾何学的歪みのみられないCT画像を用いて部分容積効果補正を行う方法の精度を評価した。この補正においては、CT画像から灰白質および白質画像を精度良く抽出することが必要である。この目的でStatistical Parametric Mapping2008年版のsegmentationにおけるガウス分布数に関してMRIでのデフォルト値に変更を行い、灰白質,白質,脳脊髄液およびその他の領域におけるガウス関数の個数を,それぞれ1,1,3,および8と設定した。この変更によりCT画像から抽出された灰白質および白質画像は、MRIから抽出されたそれらと0.9以上の高い相関を得ることができた。また、CT撮像の線量が高いほど、高精度で抽出が可能であった。CT画像の灰白質画像と白質画像を用いたPET画像の部分容積効果補正において、白質成分を差し引いた灰白質画像をPETのpoint spread functionで重畳した後にPET画像を除することで行い、MRIを用いた場合との補正画像における誤差を測定したところ、8.4%の低値にとどまった。この一連の作業を自動化し、部分容積効果補正像から小脳皮質を参照部位とすることによりStandardized Uptake Value Ratio画像を作成することに成功した。
2: おおむね順調に進展している
アミロイドPETの部分容積効果補正をCTで行う手法において、CTの線量をもとに解析パラメータをさらに検討し、segmentation精度を向上させることができた。また、MRIによる部分容積効果補正法をCTに応用することができ、歪みによる誤差のない補正が可能となり、シームレスに部分容積効果補正画像およびSUVR画像を作成するシステムを構築できた。この方法は、通常PET/CTで撮像されるCT画像を応用することができ、アミロイド蓄積量をより正確に評価することができ臨床的有用性が高いと思われる。
来年度は画像の割り算手法で生じるエッジエフェクトの補正やAC-PCラインの自動設定法の改良に取り組む。また、CT補正で生じるMRI補正に比べ8%程度の過小評価を減少させる方法を開発する。
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