研究課題/領域番号 |
24591787
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
趙 成済 順天堂大学, 医学部, 講師 (60236833)
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研究分担者 |
青木 茂樹 順天堂大学, 医学部, 教授 (80222470)
堀 正明 順天堂大学, 医学部, 准教授 (40334867)
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キーワード | パーキンソン病 / 拡散テンソル像 / 拡散尖度画像 / ASL |
研究概要 |
以下の研究結果が得られた。 1. 拡散尖度画像を用いたパーキンソン病(PD)の帯状束変性の評価 帯状束は辺縁系の一部をなす重要な神経路で、PDにおいても病理変化が比較的早くから起こる領域である。我々は帯状束の白質変性を拡散テンソル像の発展形である拡散尖度画像で評価し、拡散テンソル像における評価と比較検討した。その結果、拡散尖度画像、拡散テンソル像どちらについても帯状束の白質変性を検出することができた。さらにROC解析により前部帯状束の拡散尖度画像のパラメータであるMean kurtosis (MK)が最も良いパーキンソン病診断能を示した。前部帯状束のMKがパーキンソン病診断の感度、特異度を改善する可能性が示された(Kamagata, et al. Magnetic Resonance Imaging 2013)。 2. 拡散尖度画像を用いたPDにおける全脳白質変性の評価 iiの検討結果を基に、PDにおける全脳の白質変性を統計画像解析で検討し、拡散テンソル像における結果と比較を行った。その結果、拡散テンソル像では先行報告にあるように前頭葉の白質変性が検出されたが、拡散尖度画像ではより広範に前頭葉以外にも側頭・頭頂葉でも有意な白質変性が検出された。拡散尖度画像は拡散テンソル像より感度良く白質変性を検出できる可能性が示された(Kamagata, et al. Neuroradiology 2014)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初想定したものと同数程度のパーキンソン病患者の拡散テンソル像、拡散尖度画像、3DT1強調像を撮像することができており、データ収集は良好に進行している。 拡散尖度画像を用いてパーキンソン病の帯状束の変性を明らかにし、パーキンソン病診断に有用であることを示した結果はMagnetic resonance imaging誌にacceptされ、掲載された。また拡散尖度画像は従来の拡散テンソル像より鋭敏に、パーキンソン病の大脳白質変性を捉えうることを示し、その研究結果はNeuroradiology誌にacceptされ掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
症例数の蓄積を進める(PD患者120例、健常対象者120例程度)と共に、平成24年研究計画の結果を踏まえて更に下記のように研究を進める。 3D-T1強調像をVBMの手法を用いて、灰白質容積の評価を行い、PD群に特異的な萎縮を評価する。VBMには最新の解析法であるDARTEL法を利用し、精度の高い結果を求める。Q space imagingを利用して、特異的な白質障害を評価し、細胞径、軸索径をはじめとした大脳白質の微細な構造変化を検出する。安静時におけるfMRIデータから安静時に賦活化されるデフォルトモードネットワークの機能をPD群、認知症を伴ったPD群、健常対照群で評価し、比較検討する。ASL、VBMの結果得られた特異的な脳部位を起点として、拡散テンソルトラクトグラフィを用いて大脳白質を描出し、定量評価する。 上記の結果を包括的に総合し、神経病理学的に特徴とされる病変の解剖学的部位との関係を検討する。また、解析により得られた脳血流、脳萎縮、白質障害の定量値をMini-Mental State Examination (MMSE)やClinical Dementia Rating Scale (CDR)などの認知機能検査やFrontal assessment battery at bedside(FAB)、Hoehn-Yahr の重症度分類、Unified Parkinoson's Disease Rating Scale (UPDRS)などの一般的なPDの重症度との相関解析も行う。研究結果を関連学会で報告し、意見・批判を含め、論文報告する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の経費の主な用途は画像解析用のノートパソコン、データ保存用のハードディ スク、旅費である。当施設でもすでに処理可能なワークステーションは保有しているが,パーキンソン病患者100 人、健常対照者80 人程度のMRI画像データが既に蓄積され,画像処理と解析に長時間がかかることが推測されるため,当研究専用の高い処理能力を持ったノートパソコンが必要となる。当然データの容量も膨大となるため、保存やバックアップのための容量の大きなハードディスクも必要である。また、関連学会(日本放射線学会総会、秋季大会、日本核磁気共鳴医学会大会、国際核磁気共鳴学会、神経放射線学会)に参加し、研究結果の公表や先端MRI技術やパーキンソン病の新たな知見などの情報収集を行うための旅費も必要である。 画像処理用のノートパソコン、統計ソフトの購入と関連学会への旅費に使用予定である。
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