研究課題/領域番号 |
24591790
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
高梨 潤一 東邦大学, 医学部, 客員教授 (00302555)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 磁気共鳴画像 / MRスペクトルスコピー / モデルマウス / 脳代謝 / 髄鞘形成不全 |
研究概要 |
平成24年度はモデルマウス実験に先立ち、放射線医学総合研究所の7 テスラMR 装置(Magnet: Kobelco and JASTEC Japan; Console: Bruker Biospin, Germany)に新たに導入されたクライオプローブコイルの精度検定を施行した。ファントムを用いたMRI, MR spectroscopy 実験から、従来のコイルに比してより解像度、S/Nの良好な結果を得られることが確認された。 次いで、髄鞘構成タンパク質の一つであるミエリン塩基性タンパク(MBP)欠損マウス(Shivererマウス、MBP遺伝子に大きな欠失を有する自然発生マウス)の解析を施行した。12週齢のShivererマウス (mbp -/-) 7匹、ヘテロマウス (mbp +/-) 8匹、ワイルドマウス (mbp +/+) 8匹に対し、MR spectroscopyを施行しLCModelを用いて定量解析した。併せてマウス脳のMbp, Gfap, Ng2染色を施行した。その結果、Shivererマウス(視床)の Cho はヘテロ・ワイルドマウスに比して低値、tNAA (NAA+NAAG)は有意差を認めなかった。免疫染色ではShivererマウス(視床)で髄鞘低形成が明らかであった。 本研究結果は、Msdマウスを用いた先行研究と併せ、Cho低下が髄鞘形成不全の一般的な所見であることを示している。ヒト髄鞘形成不全疾患(Pelizaeus-Merzbacher病など)の診断に直ちに応用可能であり、治療効果判定・病態解明に応用可能と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度はおおきく二つの研究、すなわち新たなMRコイルの性能実験と髄鞘構成タンパク質の一つであるミエリン塩基性タンパク(MBP)欠損マウス(Shivererマウス)の実験である。放射線医学総合研究所の7 テスラMR 装置(Magnet: Kobelco and JASTEC Japan; Console: Bruker Biospin, Germany)に新たに導入されたクライオプローブコイルの精度検定は、ファントム実験を経てその性能が確認された。Shivererマウス実験は、茨城県立医療大学医科学センターから12週齢のShivererマウス (mbp -/-) 7匹、ヘテロマウス (mbp +/-) 8匹、ワイルドマウス (mbp +/+) 8匹の提供を受け実験が施行された。MR spectroscopyデータ収集は良好に行われ、Shivererマウス脳代謝異常が明らかとされた。結果は第40回日本磁気共鳴医学会にて報告「ShivererマウスにおけるMR spectroscopyによる脳代謝解析」し、現在英語論文を投稿中(J Magn Reson Imaging in revision)である。また先行研究(Msdマウス)と併せ、第54回日本小児神経学会シンポジウム・先天性大脳白質形成不全症にて「MRI, MR spectroscopyによる先天性大脳白質形成不全症の診断、病態解明」、12th International Child Neurology Congress にて「H-MRS in neurodegeneration.」の依頼講演を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度で Shiverer マウスのMR spectroscopy検査は修了した。今後は画像所見と脳病理の対比が必要となる。そのため Mbp、Gfap、Oligo2 染色などを施行する。Shiverer マウスの実験終了後、同様の方法で GLT1 欠損マウス(グルタミン酸トランスポータ欠損マウス)を検討する。グルタミン酸は多くの人神経疾患で病因と想定されており、同マウスはグルタミン酸の細胞毒性について重要な情報を提示しうる。小児急性脳症で高頻度の二相性脳症(AESD, acute encephalopathy with biphasic seizures and late reduced diffusion)においてもグルタミン酸が病態と関連すると考えられており、解明の一助となることが期待される。また平成25年度から中枢神経系の画像診断を専門とする東邦大学医学部・寺田一志教授を分担研究者として研究を継続予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
Shiverer マウス脳病理を継続して検討するが、適切な染色試薬を平成24年度中に購入できず物品費用に未使用額が発生した。平成25年度には免疫染色試薬の購入、専門機関での脳病理検査のための支出を予定している。Shiverer マウス研究終了後、同様の方法でGLT1 欠損マウス(グルタミン酸トランスポータ欠損マウス)を検討する。マウスの移送経費、ゲージや麻酔薬の購入、データ収集解析のための記憶媒体、ファイル、プリンターインクなどの物品購入を予定している。平成24年度は、12th International Child Neurology Congress の学会参加費(約120.000円)を支出しなかったために未使用金額が発生した。平成25年度も実験結果を発表するため、ないし情報収集のために国際、国内学会への参加費、旅費を予定している。また平成25年度から新たに分担研究者(東邦大学医学部・寺田一志教授)に研究費(300.000円)を支出する。
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