研究課題/領域番号 |
24591795
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 明治国際医療大学 |
研究代表者 |
渡邉 康晴 明治国際医療大学, 医学教育研究センター, 講師 (90454537)
|
研究分担者 |
梅田 雅宏 明治国際医療大学, 医学教育研究センター, 教授 (60223608)
田口 大輔 明治国際医療大学, 保健医療学部, 講師 (00390112)
木村 啓作 明治国際医療大学, 鍼灸学部, 助教 (50454533)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | MRI / 筋 / 粘性 / 水分子 / 拡散強調画像 |
研究概要 |
本研究課題は外部から生体を振動させ、振動刺激によって生じる生体内の水分子の動きを画像化するものであり、組織の「粘性」を反映した画像の作成を目的としている。平成24年度は「課題(1)標準物質を用いたDWIと外部加振の最適化」と「課題(2)健常成人を用いた筋粘性の測定」に取り組んだ。 課題(1)標準物質を用いたDWIと外部加振の最適化:標準物質に外部加振にあたえ、このときに生じる水分子の移動をDWIシーケンスで測定した。この実験系において、DWIシーケンスと外部加振装置の最適化を行ったところ、低い振動数の縦波では良好な再現性が確認できた。加振の振動数が増加するとDWIの撮像と外部加振が十分に同期しない現象が散見された。 課題(2)健常成人を用いた筋粘性の測定:課題(1)の結果を受けて、縦波の低い振動数で健常男性を用いて臨床応用に向けた検証を行った。下腿三頭筋に縦方向の振動刺激を与え、それに伴う変形をDW-EPIにて描出した。さらにDTIを用いて振動刺激によって生じた筋組織の水分子の速さとその方向を詳細に解析した(n=6)。その結果、組織を圧するタイミングでは、導子を中心にヒラメ筋の広い範囲に比較的速い水分子の動きが観測された。逆に圧負荷を取り除くタイミングでは、ゆっくりとした水分子の動きが導子の直下に限局して見られた。興味深いことに、組織を圧するタイミングでは水分子は左右方向(筋線維の短軸方向に相当)に動いており、圧負荷を取り除くタイミングでは頭尾側方向(筋線維の長句方向に相当)に動きが見られ、両者の違いが明確となった。これらの結果は、生体を外力で圧する場合、組織を圧するタイミングと圧を取り除くタイミングで組織の水分子の移動動態に違いが生じていることを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究課題は「粘性」を反映した画像法の開発と臨床応用を目的としている。「粘性」は、流体が動く際に生じる流体抵抗のことである。これと密接に関わるのが「弾性」であり、変形が元に戻ろうとする力や物理特性である。 平成24年度の課題(2) 健常成人を用いた筋粘性の測定で、生体を外力で圧した際、組織を圧するタイミングと圧を取り除くタイミングの間で、組織の水分子の移動動態に明確な違いが見られた。粘性解析に重要なのは、圧を取り除くタイミングの測定結果である。 圧を取り除くタイミングで、弾性として働く主要な因子は、組織が持つ固有の弾性値と血流だけである。弾性値はMRエラストグラフィーで測定可能であり、短時間の測定であれば駆血によって血流の影響を一時的に排除できる。一方、弾性に抗する力が粘性であり、組織内を流れる水の流体抵抗である。流体抵抗を求めるために必要不可欠なのが、流体速度の測定と流体の向きとなる。平成24年度の成果によって、MRビスコグラフィーを用いて、圧を取り除くタイミングにおける組織内の流体速度と流体の向きが明らかとなった。これにより、筋組織内が均質であると仮定すれば、組織の粘性値を見積もれる可能性が生じた。この解析には弾性を考慮する必要があるため、今後、さらなる解析を進めるには粘性と弾性の同時測定を行う必要がある。 以上より、平成24年度の成果は、粘性解析とその画像化の基盤となる重要な成果であり、生態における粘性の研究を大きく進めるものと認識している。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度において、DWIを用いた粘性計測である「MRビスコグラフィー」に一定の成果が見られた。平成25年度は平成24年度の結果を踏まえ、課題(2) 健常成人を用いた筋粘性の測定を継続しつつ、新たな研究課題として、MRビスコグラフィーとMRエラストグラフィー(MRE)の関係性の検討に取り組む。 粘性と弾性は「硬さ」を示す指標であると同時に、互いに密接な関係を持つ。生体において、弾性値が高ければ粘性値は下がり、粘性値が高ければ弾性値は下がると予想される。そこで2つのパラメータを一度に計測し、互いの関係を画像的に解析し、その関係を明らかにする。弾性はMREを使って、粘性はMRビスコグラフィーにて画像化する。同一の加振装置と設定条件で連続測定し、種々のバイアスを排除して高い精度の計測を行う。標準物質にて2つの測定精度が十分な質に達したことを確認した後、健常成人での測定移行する 。 この測定の実行において、加振装置の周波数が低いとMREの測定信頼性が失われ、周波数が高いとMRビスコグラフィーとの測定同期が困難となる。このため、振動刺激と測定の同期精度を高める改良を施すと同時に、両方の測定が実行可能な最適周波数を見出し、測定を遂行する。当初、平成25年度の課題は、申請者の渡邉康晴のほか、研究分担者の梅田雅宏、木村啓作の3名で行う予定であったが、同期精度を高める改良を施す必要があるため、MR室内で作動可能なデバイス作成技術に長けた村瀬智一(研究分担者)を新たに加え、4名体制で課題遂行に臨む。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、振動刺激と測定の同期精度を高める改良に必要な電子部品を購入する。そのほか、ノイズ対策のための電子部品、データを保管するためのストレージ、ヒトを対象とした測定で必要となる被験者の固定用部材等を購入する。これ以外に成果発表のための学会出張旅費および論文投稿費、円滑な測定を可能とするための被験者への謝金等への拠出を予定している。
|