研究課題/領域番号 |
24591795
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研究機関 | 明治国際医療大学 |
研究代表者 |
渡邉 康晴 明治国際医療大学, 医学教育研究センター, 講師 (90454537)
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研究分担者 |
梅田 雅宏 明治国際医療大学, 医学教育研究センター, 教授 (60223608)
田口 大輔 帝京大学, 医療技術学部, 講師 (00390112)
木村 啓作 明治国際医療大学, 鍼灸学部, 助教 (50454533)
村瀬 智一 明治国際医療大学, 医学教育研究センター, 研究員 (00708943)
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キーワード | MRI / 筋 / 粘性 / 水分子 / 拡散強調画像 / 脂肪 |
研究概要 |
本研究課題は外部から生体を振動させ,振動装置によって生じる生体内の水分子の動きを画像化するものであり、組織の「粘性」を反映した画像の作成を目的としている。平成25年度は「課題(2)健常成人を用いた筋粘性の測定」に取り組んだ。 平成24年度にも同様の課題に取り組んだ。平成24年度は健常男性(n=6)を用いて下腿三頭筋に振動刺激を与え,それに伴う変形をDW-EPIにて描出した。平成25年度は下腿三頭筋以外の領域における再現性を検証するため、大腿に振動刺激を与え,振動によって生じる変形をDW-EPIにて画像化した。その結果、下腿三頭筋で行った測定よりもデータのばらつき(個人差)が大きかった。そのばらつきは生体のかたさの指標である弾性値を超えるものであったため、この原因を追及した。DW-EPIを画像解析して算出するDTIによって解析したところ,eigenvalue(λ1、λ2、λ3)が被験者ごとに異なり、これが個人間のばらつきにつながることが明らかとなった。さらに解析を進めると被験者の体格(肥満度)が影響している可能性が浮上した。このためeigenvalueに対する体型の影響を検討することを目的に、標準体型群(n=7)と肥満体型群(n=9)で安静時のeigenvalueの違いを検証した。その結果、標準体型と肥満体型の間でeigenvalueの有意差が観察され,弱いながらも筋内脂肪とeigenvalueの間に逆相関が見られた。肥満では皮下脂肪のみならず筋内にも脂肪が沈着し,これが安静時のeigenvalueを低下させることが分かった。肥満体型群でeigenvalue低下する原因として、筋内に散在する脂肪が物理的に水の拡散を制限している可能性,肥満によって筋内の血液灌流量が減少している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究課題は「粘性」を反映した画像法の開発を目的としている。「粘性」は流体が動く際に生じる流体抵抗のことである。 課題(2)健常成人を用いた筋粘性の測定で、筋組織の脂肪がDW-EPIの結果に大きく関わるという事実が明らかになった。これは正常体型のヒトの筋は弾力に富んでいるのに対し,肥満のヒトの筋は弾力に乏しく抵抗力に欠けるという、スポーツ現場でよく体験する現象を説明できる事柄である。 平成25年度の研究成果によってDW-EPIの結果の解釈が難解になった側面は否めない。しかしながら体験的によく知られていた現象が、実験結果として明らかになったことについては、一定の成果と捉えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度において、皮下脂肪および筋内脂肪が組織粘性に対し影響を与えることが明らかになった。そこで課題(2)健常成人を用いた筋粘性の測定を継続しつつ、脂肪が組織変形に与える影響について顕彰する。 脂肪をMRI画像にて定量評価した被験者に対し振動装置を使って加振を行い、制御された変形を生じさせ、正常体型と肥満体型における筋粘性を検証する。振動装置は周波数によって異なる変形を誘発できるため、さまざまな周波数にて変形を生じさせ、筋を中心とした組織粘性と脂肪組織の関係性の解明を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度においては、被験者間のデータのバラツキに起因する実験計画の変更を行ったため、申請書に記載した当初の使用計画に沿った予算消化が困難であった。しかしながら、この変更は一時的であり、3年間を通じた使用計画には影響を与えるものではなく、平成26年度での使用計画に悪影響はないと思われる。 測定解析に必要な電子部品、ソフトウェア、機材等を購入する。その他、ノイズ対策のための部材、データ保管のためのストレージ、ヒトを対象とした測定で必要となる謝金と測定用固定部材等の購入を予定している。加えて成果発表のための学会出張旅費、論文投稿費を拠出する予定である。
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