研究課題
本研究課題は生体組織の「粘性」を反映した画像の作成を目的としている。外部から生体を振動させ、これによって生じる生体内の水運動の動きを拡散強調MRIによって画像化する。平成26年度までに、骨格筋に対して加圧負荷を与えた時と除圧負荷を行った時の水分子の動きを画像化し、それぞれに違いがあることを明らかにした。加圧時には主として弾性が、除圧時には粘性が強く関わるとされる。生体への応力緩和挙動におけるヒステリシス(一般にマックスウェルモデルやフォークトモデルとして知られる)を反映した画像化には成功した。しかしながら、この結果を解析すると、加圧時と除圧時の水分子移動の経路とスピード、方向性が異なっていた。これらの違い、とりわけ水移動の経路の違いによって、粘弾性の方程式を解けなくなり、粘性のみを反映した計算画像の作成は困難となった。そこで骨格筋の粘弾性に関わる要素を数種のコンポーネンツに分け、コンポーネントごとの変形量と水分子の動くスピードから粘性を近似するアプローチに変更した。その中で筋内における水分子の動くスピードには、肥満と骨格筋の血液灌流量が関わることを見出した。また、肥満は骨格筋の血液灌流量自体を低下させる傾向を示した。そこで本年度は、肥満で有意に高くなる筋内脂肪量、肥満で低下する筋内の安静時血液灌流量と粘弾性との関連性を精査した。しかしながら、本年度の測定では測定領域(筋ごと)や個人間のバラツキが大きかった。特に測定領域ごとのバラツキを収束させることは難しく、統計学的な結論を得るには至らなかった。
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