研究課題/領域番号 |
24591796
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
伊東 克能 川崎医科大学, 医学部, 教授 (00274168)
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研究分担者 |
玉田 勉 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (40278932)
山本 亮 川崎医科大学, 医学部, 講師 (30319959)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | MRI / 膵液 / 胆汁 / MRCP / イメージング |
研究概要 |
これまでの画像診断において、生理的な膵液・胆汁の流れを直接描出する手法はほとんどなく、排出・循環動態(排出のタイミングや規則性、頻度など)については不明な点が多い。そこで、選択的IR パルスをMRCPに応用し、膵管・総胆管の膵液・胆汁を部分的にラべリングして、その動きを見ることで、膵液・胆汁の生理的な流れを非侵襲的に可視化し、連続撮像によるシネモードで経時的に膵液・胆汁の流れを観察することで、その排出・循環動態の解析を行うという、選択的IR パルス併用cine dynamic MRCPによる膵液・胆汁の動態イメージングを行った。 膵疾患を有しない正常例12例に対し、空間選択的IRパルス(Time-SLIP)併用cine dynamic MRCP(10分間で連続40回撮像)を施行したところ、膵液の生理的な流れは正常例全例において描出された。描出頻度は、40回中25-37回で、平均31.4回であった。膵液の流れる方向は全例で膵尾側から膵頭側方向であり、逆流はみられなかった。また膵液が流れた距離を5段階(grade0:流れなし、grade1:1-5mm未満、grade2:5-10mm、grade3:11-15mm、grade4:16mm以上)に分けて検討すると、平均grade:2.41であった。また全12例においてgrade4の膵液の流れが少なくとも1回は認められた。この12例中5例においてはgrade4の膵液の流れが20回以上認められた。これらの結果から、正常膵液の排出はかなり頻回に行われていると考えられる。また膵液の流れが描出されるタイミングは不規則で、流れる距離も一定ではない。これは正常膵液の排出が間欠的で不規則であることを示唆している。流れる距離が一定でないのは、膵液の流れが定常流でないためと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
空間選択的IRパルス(Time-SLIP)併用cine dynamic MRCPの撮像条件をTR/TE=4000/500、スライス厚=50mm、FOV=32x32cm、マトリックス=320x320、SPEEDER factor=2.0と最適化することで、膵液・胆汁の流れを可視化することに成功した。また正常人での膵液排出動態を解析することに成功した。 また臨床例での検討も開始しており、急性膵炎症例では、正常例と比較して有意に描出頻度が低下していることがわかっており、また膵液が20mm幅の空間選択的IRパルス(Time-SLIP)内を流れた距離を5段階で評価すると、急性膵炎症例では、正常例と比較して有意に低下する傾向にあることもわかった。このように、急性膵炎症例では膵液の排出回数の低下がみられ、また膵液の流れる距離も短くなっており、急性膵炎に伴う一時的な膵外分泌機能障害による膵液の排出量や流速の低下がおこっていることが推察されることが、preliminaryな検討で判明している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の検討課題としては、データ収集時間と膵液が流れた距離から、膵液の流速を明らかにすること、1回の排出における膵液排出量の定量化と排出持続時間の評価、乳頭部の動きと膵液排出タイミングとの連動性、十二指腸の蠕動との関連性、食前後での膵液排出頻度の変化などを明らかにすること、などが挙げられる。 また慢性膵炎では膵液の排出能(生産能)が低下していると考えられ、この方法による膵外分泌機能評価への応用可能性が考えられる。とくに主膵管の拡張がほとんどなく、通常のMRCPではほぼ正常所見を呈する早期慢性膵炎あるいは慢性膵炎疑診症例の早期診断における役割について検討したい。 また膵管胆管合流異常症例における膵液の胆管内逆流もTime-SLIP併用cine dynamic MRCPにて画像化できる可能性がある。これはTime-SLIPでの膵液・胆汁の移動方向から流れの方向を同定できるからである。膵液・胆汁の移動距離から逆流の程度も大まかに判定できるため、膵液逆流の重症度の指標にできるか検討したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
収集されたMR 画像データから、膵液・胆汁の流速解析やカラー表示などによる新たな視点での解析を行うことを想定しており、解析ソフトが必要となるため、消耗品費として計上する。そのほか、食前食後の膵液・胆汁の動態変化を観察するために、高カロリー経口食としてテルミールを購入する。ブルーレイディスクやUSB メモリースティック、ポータブルハードディスクは、撮像したMR 画像の保存と解析のためのデータ移行に使用する。トナーカートリッジやメンテナンスキットはプリンターに使用する。 旅費としては、同様な検討を行っているカリフォルニア大学サンディエゴ校放射線科の研究者との話し合いおよび情報収集が必要であり、また2 回の国際学会での研究成果の発表を予定していることから、交通費、宿泊費として必要と考えている。
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