最終年度では選択的IRパルス併用シネダイナミックMRCP所見と、現在本邦で保険適応のある膵外分泌機能検査法であるBT-PABA試験(PFD試験)との比較検討を行った。シネダイナミックMRCPにおける膵液排出gradeとPFD試験結果とは有意な正の相関関係がみられ、選択的IRパルス併用シネダイナミックMRCPは非侵襲的な膵外分泌機能検査法となり得ることが示唆された。また慢性膵炎の重症度と選択的IRパルス併用シネダイナミックMRCP所見との比較も行った。慢性膵炎重症群では全例でシネダイナミックMRCPにおける膵液排出gradeの低下がみられたが、中等症群で膵液排出gradeの低下がみられないもの、軽症群で膵液排出gradeの低下がみられるものがあり、形態診断に基づく慢性膵炎の重症度と膵外分泌機能は必ずしも一致しないことが示唆された。また総胆管内での胆汁排出動態の検討も行った。正常群では順行性の胆汁の流れと、逆行性の胆汁の流れがみられ、いずれも生理的変化であることが示された。この所見は生理的な胆汁排出動態の理解に重要であり、十二指腸乳頭括約筋の機能評価にも寄与すると考えられる。 研究期間全体を通じて、選択的IRパルスをMRCPに応用し、主膵管・総胆管内の膵液・胆汁を部分的にラベリングしてその動きを見ることで、膵液・胆汁の生理的な流れを非侵襲的に可視化し、連続撮像によるシネモードで経時的に膵液・胆汁の流れを観察することで、その排出・循環動態を解析するという、選択的IRパルス併用シネダイナミックMRCPを用いた膵液・胆汁の動態イメージング法が確立され、広く臨床応用することが可能となり、様々な疾患への応用が期待される。
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