研究実績の概要 |
大脳基底核の黒質線条体路は、黒質緻密部から線条体に投射しているドーパミンニューロンによって形成された比較的疎な神経路である。パーキンソン病では、主にこの神経路が脱落することによって運動障害を引き起こす。そのため、非侵襲的なMRIを用いて黒質線条体経路を評価することができればパーキンソン病の病態評価や治療効果の判定において極めて有用なツールとなりうる。そこで、これまで脊髄損傷モデルにおいて検証してきたMRIを用いた神経回路の評価法をパーキンソン病モデルにも有用であると考え応用した。 神経解剖学的にヒトに近い小型霊長類コモンマーモセットにおいて、ドーパミンニューロンに選択的な神経毒1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine (MPTP)投与のパーキンソン病モデルのVoxel-based morphometryにより、黒質緻密部の体積減少が確認された。拡散テンソルMRIの解析では、Radial diffusivityの増加が黒質線条体線維の線維起始部において確認できた。次に、顕微鏡的拡散トラクトグラフィにより正常モデルの黒質と線条体の連絡構造が、黒質線条体線維の分布と一致することがわかった。パーキンソン病モデルは正常モデルに比し、MRIによるTrack 数が約半数に減少し、ドーパミンニューロンの線維数も同様に減少していることが確認された。 以上より、本手法は、パーキンソン病モデルにおける病態のモニタリングや新規治療法の効果判定において強力な診断ツールと成り得る。また、MRIは臨床で広く普及している画像診断機器であり、ヒトへの応用も可能と考えられる。
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