研究課題/領域番号 |
24591801
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研究機関 | 秋田県立脳血管研究センター(研究局) |
研究代表者 |
中村 和浩 秋田県立脳血管研究センター(研究局), 放射線医学研究部, 主任研究員 (10312638)
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研究分担者 |
豊嶋 英仁 秋田県立脳血管研究センター(研究局), 放射線医学研究部, 特任研究員 (00595077)
木下 俊文 秋田県立脳血管研究センター(研究局), 放射線医学研究部, 放射線医学研究部長 (70314599)
近藤 靖 秋田県立脳血管研究センター(研究局), 神経内科学研究部, 特任研究員 (70360360)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 脳・神経 / 放射線 / 核磁気共鳴画像(MRI) / 拡散強調画像 / 脳卒中 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、脳血管障害における新しいMRI画像診断法を提案するものである。昨年度までの研究でMRIを用いて中大脳脈閉そくモデルラットを用いた検証実験をおこなってきた。本年度は、より詳細に脳梗塞領域の血管径変化を観察するため、脳血管を直接in vivoで観察する手法を検討した。まず最初に、梗塞領域を顕微鏡下で観察するため、大脳皮質に脳梗塞を生じる動物モデルを安定に作成する手法を確立した。これまで、我々が用いてきた過渡的脳虚血モデル動物は、左総頸動脈より塞栓糸を挿入し左中大脳動脈を閉塞するモデルであり、このモデルでは大脳皮質に梗塞を持たない個体が多数認められる。そのため、側頭骨底部において直径1.5~2mmの小穴を開け、現れる中大脳動脈をナイロン糸でねじった後、両側の総頸動脈を30分間閉塞した。この実験モデルを用いることで、大脳皮質領域に安定的に梗塞が認められることを確認した。次に、顕微鏡下での測定系を構築し顕微鏡観察可能な状態とした。今後この実験条件を踏まえて、虚血領域での血管径の変化を観察していく。 また、動物実験モデルでは、過渡的脳虚血モデルラットにおいて,血管径変化にもとづく、位相画像変化について検討した。位相画像の前処理としておこなわれる位相折り返し処理で位相画像の値は変化するため、59匹の脳虚血モデルラットの実験結果から、高周波フィルタと2次元多項関数を用いた位相折り返し方法を検討した。その結果、位相差の値は高周波フィルタの次数により異なっていた。また、8次と12次の2次元多項関数を用いた位相折り返し処理の値はほぼおなじであった。 臨床用MRI装置のシーケンスプログラムの検討では、新たに導入されたMRI装置で、2回収束型、1回収束型双方の拡散強調画像を取得できることを確認した。今後、倫理委員会の審査を経て、臨床患者から症例を収集して解析をおこなっていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
動物モデルラットを用いた測定において血管径を直接測定する手法として、顕微鏡下における観察手技を確立した。これまでの研究において、拡散強調画像から血管径変化を推測できる可能性が示唆されているが、実際の観察において結果を検証するためには、顕微鏡下における観察が不可欠である。動物用MRI装置では信号雑音比が悪いという問題の克服が困難であるが、ヒト臨床画像の検討にあたって、新たに導入されたMRI装置では、2回収束型、1回収束型双方の拡散強調画像を取得できるようになった。計画はやや遅れているものの、これから倫理委員会の審査を経て、臨床患者、ボランティアからのデータの取得が可能な状態になったと考えている。シミュレーションモデルでは、脳自動調節能を模擬したモデル解析方法により、臨床患者の条件も踏まえて、検討を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の目的どおり、通常の拡散強調画像(DWI)撮像法における見かけ上の拡散定数(ADC)の計算値が脳血液量(CBV)といった磁化率効果の影響をうけて大きく変化することに着目し、異なる2つのDWI撮像法を利用した計算画像を求めることで、脳梗塞といった脳血管障害におけるMRI画像診断法を提案していく。通常のDWI撮像法である単一収束型スピンエコー法のDWI(SRSE-DWI)に加え、磁化率効果の影響が少ない2回の180度パルスを加える2回収束型スピンエコー法のDWI(TRSE-DWI)を合わせて取得することで、2つの画像からの計算画像の取得が有用であることは、シミュレーション結果から示されている。新たに導入された臨床用MRI装置では、2回収束型、1回収束型双方の拡散強調画像を取得できるようになったことから、倫理委員会の審査を経て、ヒトボランティア測定をおこなっていく。また、脳血管自動調節能を模擬したシミュレーションも臨床例に合わせて検証をすすめ、得られたデータの解釈をおこなっていくこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
ヒトのボランティア計測に進めなかったことから、謝金の支出がなく、消耗品の購入も予定に満たなかったため次年度使用額が生じた。この費用は平成28年度において、動物実験による実証実験を行うため、予定より動物を用いた実験が増えることが予想され、この実験の費用に用いるほか、これまでの成果を報告するための学会参加旅費に充当する。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は平成27年度に引き続き、動物実験による実証実験を進める。また、臨床研究に向け、豊嶋らと協力して、倫理委員会の審査を経て、ヒトボランティア測定、臨床患者の測定をおこなっていく。臨床的な知見にもとづく助言は平成27年度に引き続き、放射線科診断医である木下が行う。中村は動物用MRI装置において動物実験による実証実験を進めると共に、顕微鏡下での脳表血管の観察から、MRIによる実験結果を実際の血管径の変化と対応して検討する。 近藤は動物用MRIを用いた研究において、測定後病理標本を作製することにより、その血管径の分布や密集度との関係を解剖学的に確認する利点を生かして実験を進める。また、中村と連携して動物実験による実証のため、20匹程度の脳梗塞モデルラットを用いて検証する。
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