研究課題/領域番号 |
24591803
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研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
辻 厚至 独立行政法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, チームリーダー (60303559)
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研究分担者 |
加藤 孝一 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 脳 病態統合イメージングセンター, 室長 (50382198)
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キーワード | PET |
研究概要 |
前年度は、炎症モデルでの評価を行い、[11C]AIBが治療効果判定に有効であることが示唆されたため、今年度は、放射線治療モデルで[11C]AIBの取込みの変化をみることで、治療効果判定に有用かどうかを評価することとした。ヒト肺癌細胞をヌードマウスの皮下に移植しモデルマウスの腫瘍に放射線を部分照射し、腫瘍への集積を治療前後で経時的にPETを行い、治療効果が判定できるかどうかを評価した。PET撮像は、治療1日前、治療後1日目、3日目、5日目に実施した。照射1日後の[11C]AIBの腫瘍への取込みは、有意差はなかったが照射前に比べ高い傾向にあった。3日目、5日目は、照射前に比べ、有意に取込みが低下していた。3日目では、腫瘍サイズはあまり減少しておらず、むしろ大きくなっているものもあり、腫瘍取込みと腫瘍サイズの間には相関はなかった。[11C]AIBの取込みの変化は、腫瘍サイズとは異なる要因が関係していることを示唆している。[11C]ヨウ化エチルの[11C]COとMeLiを反応させた後に還元、ヨウ素化する合成法を試みた。[11C]CO2のモリブデンカラムを用いた還元は、短時間に高収率かつ再現性よく進行し、[11C]COを得たが、[11C]COは溶媒に対する溶解性が低く、MeLiとの反応効率が非常に低く、また、メチルリチウムに対する反応数の制御も困難であった。昨年度に引き続きアルファ-エチル[11C]メチルグリシンの自動遠隔合成に向けた反応条件の検討を行った。[11C]メチル化反応の塩基にKOtBuを用いる場合、塩基溶液の失活により、反応効率が低下し、再現性良く目的物を得ることが困難であった。そこで、塩基溶液調整時にラジカルクエンチャーを加えたところ、再現性よく[11C]メチル化反応が進行した。これらの結果は、[11C]ジエチルグリシン標識合成法開発に有用な知見を与えると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放射線治療モデルで、[11C]AIBの治療効果判定における有用性を評価した。[11C]ヨウ化エチルの効率的な製造法の開発の進捗は芳しくはないが、新しいPETプローブの開発として、アルファ-エチル[11C]メチルグリシンの新たな合成法を開発し、昨年度よりも効率よく標識合成することに成功もした。これらのことより、研究はおおむね順調に進んでいると評価できると考える。
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今後の研究の推進方策 |
放射線照射後の[11C]AIBの腫瘍への取込みの変化の原因を、遺伝子発現解析や免疫染色等で検証する。また、アルファ-エチル[11C]メチルグリシンの標識合成のPETイメージングを行う等、有用性の評価を行う。[11C]ヨウ化エチルを効率よく得るために、反応効率の向上および反応の制御ができるようなMeLi溶液の濃度や溶媒の種類、反応温度や反応容器の形状の検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は、前年度合成に成功した方法でのアルファ-エチル[11C]メチルグリシンの収率が安定しなかったため、新たな標識法の検討を行っていたためである。 次年度の研究費と合わせて、プローブの評価としてPETイメージングなどを行う。
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