まず基礎研究として、膵癌肝転移モデルとなる乏血性肝腫瘍をVX2腫瘍移植家兎を用いて作成した。その腫瘍に対して前年度前半に40μmのサイズのマイクロスフェアを用いてbland-TAEを行えば高い腫瘍壊死率が得られることを確認した。それに引き続き、前年度後半から今年度にかけて、イリノテカンを含浸させた薬剤溶出性マイクロスフェアを用いたTACEの基礎研究をVX2腫瘍家兎を用いて実施した。結果は十分な腫瘍血管の塞栓を行えば薬剤含浸量を減らしても高い腫瘍効果がえられることが示され、小さいサイズのマイクロスフェアの利点が証明された。 さらにイリノテカン含浸マイクロスフェア投与後の薬物動態について、腫瘍組織内および末梢血中のイリノテカンとSN38濃度を測定して検討した。その結果、腫瘍内部の高いイリノテカンとSN38濃度が投与後24時間および72時間後に検出された。これらの結果は J Vasc Intervent Radiol 2014; 25:1037-1044に報告した。 以上の基礎研究の結果をもとに、平成26年度から施設IRBの認可を得て、イリノテカン含浸40μmのマイクロスフェアを用いた臨床試験を開始した。現在もなお症例を集積中である。
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