研究課題
これまでの研究では動脈硬化性粥腫の研究は進められているものの、器質化した血栓と新鮮な血栓の区別を効率的に、また非侵襲的に検出する手法は確立されていない。活性化血小板と傷害内皮細胞に発現されるP-selectinを標的とする分子イメージング技術を用いて、血栓の描出を得ることを目的とした。血栓の作成には動脈瘤モデルを作成し、多糖類であるフコイダンを超常磁性酸化鉄を付加した造影剤で撮影が行われた。造影剤の作成はフランス国立衛生科学研究所(INSERM)に依頼した。フコイダンとP-selectinの親和性は既に検討されていた。ラットモデルのMRIでの鉄製剤での造影効果は信号の低下として描出され、本研究においても造影剤の投与後、病巣の大きさによっては15分後から信号の低下が得られた。2時間までの経時的な撮影でも信号低下が進行した。2時間の撮影の後に血管が摘出され、視覚的にも血栓を確認可能であった。標本固定の後に、各種免疫染色、H-E染色が行われた。隣接切片は電子顕微鏡走査が行われた。抗P-selectin抗体での染色により、血栓部位にP-selectin分子が強く発現していることが確認され、活性化血小板の存在が示唆された。血栓の内腔則には均一なP-selectinが発現し、変性した血球成分の塊の中にも入り込むような複雑な形態の発現形態が見られた。凍結コイルを用いたUltra-ShortTE撮影によって、非常に分解能の高い画像が撮影された。エコー時間を調整することで、血栓の内部に入り込んだ微細な鉄分布を確認することが可能であった。これらの分布は電子顕微鏡的にも確認され、造影剤投与による信号低下はP-selectinの発現部位に一致し、特異的な分布を示すことが確認された。本法が臨床的に活用されることが可能となれば、生体に対して非常に安全性の高いバイオマーカーとなることが予想された。
すべて 2015
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Nanomedicine
巻: 10 ページ: 73-87
10.2217/nnm.14.51