研究課題/領域番号 |
24591824
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
飯田 靖彦 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (60252425)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | PET診断 / がん診断 / ヘマトポルフィリン / 放射性薬剤 |
研究実績の概要 |
従来のポジトロン核種より長い半減期を有するPET診断薬の開発は、核種の製造から撮像までの時間的制約の緩和やサイクロトロン未設置施設におけるPET診断の利用拡大に貢献できる。本研究では、半減期12.8時間の64Cuを利用したがん診断薬開発を計画し、光線力学的治療に用いられるHematoporphyrin (HP)およびその誘導体の64Cu標識体を合成、評価した。さらに64CuHP誘導体の腫瘍集積量を向上させるため、水溶性でかつ腫瘍認識性を有するRGD peptideによりHPを修飾したRGD peptide修飾HP誘導体を設計、合成した。得られた3種類の誘導体([RGDK-ED]2-HP、[(RGD)2K-ED]2-HP、c[RGDfK]2-HP)はいずれも高い水溶性と血清中での安定性、また低いタンパク結合率など有望な性質を示したが、64Cuの標識率が大きく低下した。ヒト乳腺がん細胞(MDA-MB-231)移入マウスを用いて64Cu標識体の体内分布を調べたところ、64CuHPと同程度の腫瘍集積量を示すにとどまり、期待した結果は得られなかった。これは標識率を上げるため標識に用いる誘導体の量を大幅に増やしたことで、溶液中に未標識の誘導体量が増加し、腫瘍組織での64Cu標識体の取込みを阻害したものと考えられる。今後、標識条件を再検討し、標識に使用する誘導体量を減らすことで腫瘍組織への64Cu標識体の取込み量が改善するか検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
26年度に、水溶性でかつ腫瘍認識性を有するRGD peptideによりHPを修飾したRGD peptide修飾HP誘導体を合成し、担がんモデルマウスにおける腫瘍集積性を検討する予定であったが、合成した3種類の誘導体の64Cu標識率が低かったこと、26年度の64Cu製造回数が少なかったことにより標識条件の検討に終始したため、正確な評価ができなかった。引き続き新規誘導体の標識率改善を目指すとともに、64Cu標識薬剤を臨床で使用する際の投与量、撮像時間、評価方法および吸収線量の評価を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
新たにマイクロウェーブ合成装置を導入し、高比放射能のRGD peptide修飾HP誘導体を得る目処が付いた。27年度は、高比放射能標識体を用いて担がんモデルマウスにおける腫瘍集積性を検討するとともに、EPR効果による腫瘍集積を期待した多量体の利用などにより、腫瘍集積量の向上を図る。また64Cu標識薬剤を用いたPETによるインビボイメージングの有効性を示し、64Cu標識薬剤を臨床で使用する際の投与量、撮像時間、評価方法および吸収線量の評価を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
合成した3種類の誘導体([RGDK-ED]2-HP、[(RGD)2K-ED]2-HP、c[RGDfK]2-HP)の64Cu標識率が低かったこと、26年度の64Cu製造回数が少なかったことにより標識条件の検討に終始したため、担がんモデルマウスにおける腫瘍集積性の検討が十分に行えなかった。これらの検討は27年度に実施する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
新たにマイクロウェーブ合成装置を導入し、高比放射能のRGD peptide修飾HP誘導体を得る目処が付いたため、27年度は、高比放射能標識体を用いて担がんモデルマウスにおける腫瘍集積性を検討する予定である。64Cu標識薬剤を臨床で使用する際の投与量、撮像時間および吸収線量を評価することで全額を使用する。
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