研究課題/領域番号 |
24591827
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
金 朝暉 独立行政法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, 主任研究員 (70324150)
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研究分担者 |
張 明栄 独立行政法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, プログラムリーダー (80443076)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | alpha5beta1 integrin / 18F / PET imaging |
研究概要 |
α5β1インテグリンは膜糖タンパク質で、癌の血管新生や浸潤または転移に関与している。新生血管の内皮細胞及び一部の腫瘍細胞ではα5β1が高発現し、癌の分子標的治療や腫瘍イメージングの重要なターゲット分子の一つであると認められている。本研究では、フィブロネクチンミメティックペプチドPR_b (アミノ酸配列:KSSPHSRNSGSGSGSGSGRGDSP)を用いた、PETイメージングを目的とした。PR_bは、ポジトロン放出核種18F(半減期110分)で新規標識法より標識し、腫瘍のα5β1インテグリン発現をイメージングターゲットにした。平成24年度に実施した研究の成果について、(1)PETイメージングプローブの構築・合成すなわちペプチドの設計、修飾、合成、放射能核種による標識、精製および安定性についての評価、(2)18F標識したペプチドのin vitro でのα5β1インテグリンへの結合および特異性の評価との二つに分けられる。まず、PR_bを18Fで標識するため、PR_b-NOTA分子を設計した。PR_b-NOTAの構築には、PR_bペプチドの配列の修飾とその部位へのキレート剤NOTA(p-SCN-Bn-NOTA)を導入し、純度95%以上の標識前駆体を合成することができた。18Fを用い、PR_b-NOTAへの標識を検討したところ、放射化学純度約90%以上で18F標識NOTA-PR_bを得ることができた。18F標識体はin vitro での評価により、安定であることが確認された。一方、α5β1発現の高いB16F10細胞に対し18F標識NOTA-PR_bの結合活性が認められた。またその細胞を用いて、18F標識PR_bペプチドと非標識PR_bペプチドとの併用により培養細胞への結合阻害実験をおこない、競合的に阻害されたことを明らかにし、α5β1インテグリンへの特異性を証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1) PR_bペプチドのNOTA修飾効率があまり高くなかった。 (2) 効率的かつ恒常的に放射化学的純度約90%以上で18F標識したNOTA-PR_bペプチドを安定的に実験に供給することがまだできていないため、実験の進度がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
(1) PR_bペプチドのNOTA修飾状況を改善する方法を検討する。 (2) 18FのPR_b-NOTAへの標識は、短時間かつ温和な条件で高い放射活性を得るための標識条件を検討する。 (3) 18FのPR_b-NOTAへの最適標識条件を確立する。 (4) 18F標識PR_b-NOTAがインビトロでの安定性を分析し、必要に応じて安定性改善の検討をおこなう。 (5) 標識プローブの作成を容易にするため、自動化の方法も検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1) 18FのPR_b-NOTAへの標識法を確立する。 (2) 18F標識PR_b-NOTAのin vitro でのα5β1インテグリンへの結合および特異性の評価:平成24年度にα5β1発現の高いB16F10細胞を用いて、18F標識NOTA-PR_bの結合活性及び特異性があることを判定したが、α5β1発現のない細胞株を用いて18F標識PR_bペプチドの細胞への結合実験を行うことから、18F標識PR_b-NOTAの特異性をさらに検討する。 (3) 18F標識されたPR_b-NOTAはインビトロでの安定性を分析する。 (4)以上の結果をまとめ、学会発表および学術誌への論文発表をする予定である。 (5) 18F標識PR_b-NOTAの体内動態の検討。(6) α5β1インテグリンへの結合能と特異性を高めるために、PR_bペプチドの修飾法を検討する。
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